北村薫◎飲めば都
* 「いいか、小酒井。──昔、風渡るスコットランドの酒蔵には、ウィスキーキャットと呼ばれる猫が飼われていたんだ」 「……猫、ですか?」 奇妙な取り合わせだ。 「そいつらが、群れ成す敵から、大麦を守った。奴らは命がけで、嘴(くちばし)鋭い鴉や牙を剥く大ネズミと戦ったんだ。傷つき、倒れても、決して屈することはなかった。 ──そうなんだ。──モルトウィスキーってのはな、──奴らが、己れの誇りをかけて守り抜いた、命の水なんだ」〔…〕 「いいか。小酒井、池井。──俺達編集者はそれなんだよ。──俺達は、本の蔵に住むウイスキーキャットなんだ」 |
◎飲めば都│北村薫│新潮社│ISBN:9784104066070│2011年05月│評価=○
<キャッチコピー>
仕事を愛する酒女子必読! 新入社員時代の失敗、先輩方とのおつきあい、人生のたいせつなことを本とお酒に教わったー文芸編集女子小酒井都さんの恋の顛末は?
<memo>
イッキ読みできる本。“酒女子”編集者のゲラとゲロの日々。そして駄洒落と薀蓄の連作短編。あまり成長しないが、一種のビルドゥングスロマンでもある。酒女子の先輩いわく「そうだなあ、結婚はね、──何となくするもんよ。──恋愛はうっかり、結婚は何となく。これが秘訣ですね」。
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