池内紀/イッセー尾形◎シロターノフの帰郷
* なじみの店、なじみのテーブル、なじみの人、どれか一つが欠けてもダメ──というのがシロターノフの口癖だった。一つでも欠けると値打ちが半減、いや、ゼロになる。
なじみの店となじみのテーブルはどうにかなるにしても、 問題はなじみの人である。これがいちばん大切で、また難しい。
さりげなく会って、気軽に別れられる。それでいて会っているあいだ、なんとなくうれしくてならず、しばらく会わないでいると、次の機会が待ち遠しい。
シロターノフにとって、そして良男にとっても、それはスナック・ボルガである 。
──「シロターノフの帰郷」
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◎シロターノフの帰郷│池内紀・文/イッセー尾形・挿画│青土社│ISBN:9784791765980│2011年04月│評価=○
<キャッチコピー>
レッキとした日本人、広田行一はなぜシロターノフになったのか?どこかが、あるいはすべてが常識からほんの少しだけ“逃げ出す”不思議な世界。イッセー尾形による“演技力ゆたかな”イラストを添えた全25篇。
<memo>
2008年1月より2年間にわたり山川大輔名義で『銀座百点』に連載されたもの。毎月こんなしゃれた短編が読めるなんて、なんと贅沢な雑誌だろう。短編集としてまとめて読むのではなく、雑誌で毎月一編ずつ読むのが正しい読み方なのだろう。
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