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2011.08.03

木津川計◎人生としての川柳

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(あらが)いようもなく老いはしのび寄り、襲いかかる。人生は夕暮れを迎え、もはや晩年たることをわきまえる。そんな境涯を川柳はどう詠むのか、今回のテーマである。

好きなだけのませてやれと見放され  西尾 東

(ひと)さんに「タフですね」と言われたら年寄りであることを自覚せねばならぬ。誰も反対しなくなったら晩年は相当に深化した、と心得るべし。

しかし、思いのままの振る舞いを容認される最晩年のなんという幸せであろう。制限されず、禁圧されざる自由の境地に到達するため、人はみな不自由に耐えてきたのかもしれない。

右の句、「見放され」た悲哀ではあるが、許された自由を、ならばよろこぼうではないか。

川柳の画白味は、歌の文句の「うれしがらせて泣かせて消えた」悲しみを悲しみとして詠むのではない。客観視して笑いながら達観する余裕が川柳の精神なのだと僕は思い続けてきたのだ。

◎人生としての川柳│木津川計│角川学芸出版│ISBN9784046212887201007月│評価=△

<キャッチコピー>

人間の喜怒哀楽を、機知とユーモアをもって五・七・五に詠い上げる川柳。この庶民の文芸を大家から無名の柳人の句まで数多く取りあげ鑑賞。上方芸能の専門家による川柳への限りない慈愛が込められた渾身のエッセイ。

<memo>

七転び八起きしてからまた転び  快楽園

お宮お蔦浪子明治は泣く女  岸本水府

人の世や鳴呼に始まる広辞苑 橘高薫風

大阪は人形が恋を語る町 露の五郎兵衛(以上、本書から)

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