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2011.08.26

司修◎本の魔法

20110826

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飯田さんは装幀原稿が気に入らないらしい。それは鈍感なぼくにも伝わった。〔…〕

午前零時を回ったころ、

「実は、こうした案では原稿料をもらえないと思って、飯田さんに見せない装幀案があることはあるんです。ただ、何としても、ぼくは、何もしないで仕事になってしまう、という思いを消せないので」と断って、

本箱から、世界素描全集 『GREAT  DRAWINGS  OF  ALLTIME  IV』の東洋編を取り出して、作者不明の、鎌倉時代に描かれたと思える、「牛の絵」を開いて、

「オビで牛の下半身を隠すと、臥牛山になるんだ」といった。〔…〕

飯田さんは、歌舞伎役者のごとく膝を打って、「これです」とほぼ絶叫した。ぼくは装幀者として、何の作業もしないデザインを恥じていたのだと思う。

──「銀── 『月山』森敦」

◎本の魔法│司修│白水社│ISBN9784560081433201106月│評価=◎おすすめ

<キャッチコピー>

戦後を代表する数々の文学作品の装画・装幀を手がけ、作家と密につながり、深い読みを表現してきた芸術家が照射する、文学と人間の深淵。

<memo>

タイトルの『本の魔法』とは、本を魔法にかけるのではなく、本の魔法にかかってしまったことである。〔…〕本の魔法にかかって、びりびりと感じたものの記録である(あとがき)

当方未読の『月山』から引用したのは、たまたま「還ってくる雪」という月山を北に仰ぐ山形・西川町大井沢という山村の1年にわたる暮らしのNHKドキュメントを見たせいである。灰-「私のアンネ=フランク」は奇妙な短編小説のような話だし、紅―「河原にできた中世の町」は恐るべき絵本制作の現場。

和田誠■ 装丁物語

堀内誠一■ 父の時代・私の時代――わがエディトリアル・デザイン史 

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