上原善広◎私家版差別語辞典
* 現在、マスメディアにおいてはやはり使用されていないようで、言いかえによってこの片手落ちを聞くことはほとんどない。 やはり障害者団体に対する配慮なのであろうが、「片手落ち」から「片手のない人」を連想して自粛し使わない方が、かえって恣意的に感じる。〔…〕 部落解放運動の中で、差別用語が糾弾を受けた結果、極度に規制されていった経緯には同情の余地が残るが、その後の「言葉の名誉回復」をきちんとするべきだと思う。それがなされていないために、私は本書を書いたと言ってもよい。 歴史的な言葉は歴史に戻し、差別感がまだついていないものはできるだけ元に戻す。 それこそが「言葉の名誉回復」になると思う。 ──「片手落ち」 |
◎私家版差別語辞典│上原善広│新潮社│ISBN:9784106036798│2011年05月│評価=○
<キャッチコピー>
「差別する言葉」はなぜ生まれ、なぜ消えていったのか? 被差別部落に根ざす隠語、あるいは心身障害や職業にまつわる言葉をめぐり、語源や歴史的背景、どこでどのように使われてきたのかなどを具体的に解説。また抗議と自主規制により「消えた言語」となってしまった現状も抉る。
<memo>
先日、発掘本・再会本100選の一つとして、きだみのる『気違い部落周游紀行』(1948)をとりあげた。本書には、1993年に全国電気通信労働組合機関誌『あけぼの』5月号に、同書の舞台となった地域を訪ねて写真とともに紹介する記事に関して、内部からの指摘で26,0000部を回収したとある。
──なにしろ「気違い」と「部落」という言葉が二つも入っているのだから。今このタイトルで出してくれる出版社は皆無だろうし、再版も不可能であろうこの現在の状況は、やはりどこか「狂っている」。そうした意味では、私たちは気がつかないうちに、とても窮屈な世の中で生きているといえる。人権意識の高まりは、同時に閉塞状況をも生み出すという逆説があることを忘れてはいけない。一度失った言葉は、取り戻すのがほぼ不可能にちかい。しかし、コツコツとながらもそれをしていくのが、出版人なりマスメディアの課題であるといえる(本書「気違い」)。
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