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2015.10.25

◎10オンリー・イエスタディ│T版 2015年9月~10月

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★片岡義男『去年の夏、ぼくが学んだこと』

「ひとりの男がこの世でなにかをしようと思ったら、三人の男が必要なんだそうだ」

「あらゆる物事の原理原則を教えてくれる男」「なにごとに関しても直言してくれる男」

「そして三人目の男は、師と仰ぐ男だ」

★片岡義男『去年の夏、ぼくが学んだこと』〇2015

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『去年の夏、ぼくが学んだこと』著者は76歳。なぜ1967年が舞台の小説が今書かれるのかが分からない。

当時「ワンダーランド」「宝島」より前、テディ片岡時代である。あの時代はよかったと老人たちが郷愁を感じるのか。それとも若い人たちが60年代に憧れるのか。たしかに魅力的な女性たちが登場するが……。

 

★鵜飼秀徳『寺院消滅』

荒廃した寺の本堂に入ると、以前は多くの信者が祈りを捧げたであろう仏様が一人で住んでいた。しんと静まり返った空間で、私は自然に手を合わせていた。しかし、こうした全国に点在する荒廃寺院も、かつては住職が存在し、ムラ人が集い、守り、信仰の拠点としての役割を果たしていたはずだ。なぜ、寺を守れなかったのか。〔…〕

寺が消えることは、自分につながる〝過去〞を失うことでもある

★鵜飼秀徳『寺院消滅――失われる「地方」と「宗教」』2015

 

本書は、地方の困窮寺院の声を拾ったルポルタージュ、伝統仏教の構造をひもといた歴史書、あるいは菩提寺との付き合い方が分かる実用書でもある。

玄侑宗久氏のインタビューが出色。

「現代人は面倒なお付き合いを避けがちですよね。でも考えれば面倒なお付き合いこそが、「絆」なんです。絆って、語源は馬の鼻づらをつなぐ綱のことですからね。絆は、束縛そのものなんです。その束縛を、面倒と考えるか、貴重なネットワークと考えるか。それはその人の考え方次第なんじゃないでしょうか」。

 

 

★市川哲夫編『70年代と80年代――テレビが輝いていた時代』

 

『ニユースステーション』は、ニュースのテレビ番組化に成功した。テレビ朝日、電通とオフィス・トゥー・ワンはニュースを原材料とした商品開発に成功し、確実に利益が見込めるロングセラー商品を手にしたことになる。(高村裕)

★市川哲夫編『70年代と80年代――テレビが輝いていた時代』◎2015

70年代と80年代――テレビが輝いていた時代』はTBS『調査情報』掲載されたもの。

オンリー・イエスタディものだが、7080年代を「体験そのものを語りうる人々が健在で」、その当事者による執筆が多いのが特色。たしかに、大阪万博からおたくの登場まで喧噪と狂騒の“黄金時代”はすべてテレビの中にあった。

 

柳田国男『柳田国男の故郷七十年』

 

姻戚と本当の親類との間にもとは、はっきりした差別があった。播州の仕来りによると〔…〕姻戚関係はその関係のあった本人の死後三十三年を境にして解消して他人になっていいことになっているようである。

★柳田国男『柳田国男の故郷七十年』〇2014

「甲寅叢書」の第三冊日が私の河童の本すなわち「山島民譚集」である。購読者の中には、まだ学生時代の芥川竜之介もいた。ずっと後のことであるが、有名な「河童」という小説は、私の本を読んでから河童のことが書いてみたくなったので、他に種本はないということを彼自身いっていた。(『故郷七十年』「甲寅叢書」)

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民俗学者の柳田国男(18751962)は現在の兵庫県神崎郡福崎町生まれ。『故郷70年』は1958年神戸新聞に嘉治隆一を聞き手とした談話による自伝。翌1959年のじぎく文庫から刊行。実に半世紀を越えて手に取った。本書PHP研究所版は若い読者向けに半分程度の抄録。播州の遠き風景、生活、仕来りが興味深い。

 

 

★岸富美子・石井妙子『満映とわたし』

 

「岸さん、実は、これは私が実際に体験したことなのです。留守中、日本軍が入ったと聞き、慌てて戻ると村は全滅していたのです。私の親兄妹も全員が日本軍によって虐殺されていました」『保衛勝利的果実』の伊琳監督

★岸富美子・石井妙子『満映とわたし』◎2015

 

『満映とわたし』は、岸富美子の手記をもとに石井妙子がリライトし各章に解説、注を加えたもの。

  満映(満洲映画協会)が取り上げられるとき、これまで甘粕正彦、李香蘭が主役、内田吐夢、大塚有章が脇役で鳥瞰図のように描かれてきた。

  だが本書は映画編集者岸富美子とその家族が主役、脇役内田吐夢、大塚有章、端役甘粕正彦、李香蘭で“虫瞰図”(大森実の造語)のように描かれる。

 

 

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