◎11癒しの句・その他の詩歌│T版 2015年8月~10月
★石牟礼道子『石牟礼道子全句集 泣きなが原』
〈神々などというものは――ついいましがたまで在った――〉という石牟礼道子さんの想いの果てが、やがて断念という万斛の想いを秘めながら、
祈るべき天と思えど天の病む
へ結晶していった。(穴井太)
★『石牟礼道子全句集 泣きなが原』△2015
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『石牟礼道子全句集 泣きなが原』。「若い頃は短歌を作っていたけれど、俳句の方が性に合っていたようだ。というのはふっと湧くイメージを書きとどめるとすむからだと思う」とあとがき。70年代からの全213句。
一読したが、俳句というより、七七の欠けた短歌のような気がした。「死におくれ死におくれして彼岸花」「まだ来ぬ雪やひとり情死行」
★矢崎泰久『句々快々―「話の特集句会」交遊録』
この45年というもの、句会以外の場で俳句を詠んだ記憶がない。それどころか、句を作るのが何より辛い。
楽しいと思って作ったことなど一度たりともなかった。
端的に言えば、難行苦行である。俳句を作らないで済むなら、これほど楽なことはないと、句会の席で幾度思ったか知れない。
★矢崎泰久『句々快々―「話の特集句会」交遊録』△2014
東京やなぎ句会と並ぶ著名人句会「話の特集句会」は45年の歴史をもつという。和田誠『五・七・五交遊録』に詳しい。
会則に「常にバレ句を詠むよう心がける」とあり、あるとき鬼百合(きゆり)の「松茸を喰らひつしゃぶりつまた喰らひ」を週刊誌がスッパ抜いた。それが話題になって、とうとう去ってしまったのだ。週刊誌に大きく取り上げられ、それっきり彼女は来なくなったという。名句・迷句を多数収録。
★金原瑞人『サリンジャーに、マティーニを教わった』
詩や短歌はいったん覚えてしまえば、死ぬまで心にしまっておける。いつでも好きなときにのぞいてみることができる。
好きな詩や短歌の詰まった心はそのまま、小さな自分だけの宇宙だ。(「僕がそのうち訳したい詩」)
★金原瑞人『サリンジャーに、マティーニを教わった』〇2015
ブックカバーに本文の書き出しだけ、題名も作者名もわからないラッピングされている文庫本フェア、作品にはタイトルとプライスだけで買った人だけにプロフィールを示す美術展を紹介した「心惹かれる1行、心揺さぶる1シーン」などエッセイ37篇。
役者も、詩人も歌人も、画商も骨董屋にもなりたかった翻訳家。前へ前へ突き進むストイックさが欠けているのだと。
児童文学、ヤングアダルト向け本を訳してきたせいか、1954年生まれなのにこの若々しい文体。
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