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2015.11.09

発掘本・再会本100選★鬼の詩/生きいそぎの記│藤本義一

20151109


――思想堅固デナク、身体強健デナク、粘リト脆
(もろ)サモチ酒ト色ニ興味アルモノモノ求ム。

監督室内、股火鉢ノ川島――。


撮影所の掲示板に、手帳の一頁を破った募集広告がピンでとめられていた。〔…〕


「やめとけ。あかん。行かん方がええ」

先輩は断固として反対した。理由は、川島雄三に従(つ)くと、先ず胃潰瘍になるか肝臓をやられるという。


――『生きいそぎの記』


★鬼の詩/生きいそぎの記――藤本義一傑作選│藤本義一
│河出書房新社│文庫│ISBN9784309412160201304月│評価=◎おすすめ│小説「生きいそぎの記」講演記録「師匠・川島雄三を語る」ほか。


川島雄三(
19181963)の作品といえば、当方「洲崎パラダイス赤信号」(1956)「幕末太陽伝」(1957)しか見ていない。藤本義一(19332012)が弟子入りする上掲の場面は、その二作のあと「暖簾」(1958)が終わり「貸間あり」(1959)の脚本準備が始まるころである。


「プロとアマはどう違うんですか」と川島に問われ、「嫌なことをやるから好きなことができるのがプロじゃないんですか。嫌なことを避けるから好きなこともできないのがアマというんじゃないですか」と答え、気に入られ弟子となる。


 川島はすでに筋萎縮性側索硬化症を発症しており、それだけで満腹になりそうなほど掌にいっぱいの薬を飲んでいたという。その川島と
20代半ばの藤本とが、「貸間あり」の脚本を練る。川島は病気の進行に追いつかれぬよう映画づくりに生きいそぐ。その破天荒な言動を綴ったのが「生きいそぎの記」。


 破天荒、鬼気迫る、壮絶なと前置きをしたくなる3篇。落語家の「鬼の詩」、漫才師の「贋芸人抄」、三味線の「下座地獄」。川島雄三を描いた短編と講演記録を本書は収録している。


 芸人の又吉直樹が芸人を描いた小説「火花」(
2015)がベストセラーとなったが、40年前の藤本義一「生きいそぎの記」(直木賞候補)、「鬼の詩」(直木賞受賞作)と比べると、果たして文学は進化しているのかと疑問符が浮かぶ。

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