2016年■傑作ノンフィクション★ベスト10
当方、今年は体調を崩し、ブログを半年休んだ。またツイッターも140字という呪縛に勝てず断念した。が、なんとか今年も傑作ノンフィクション★ベスト10を選んだ。2015年2月から2016年11月までに刊行されたもので、順不同。
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戦争や内戦を幾度も繰り返してきた中国政府はたぶん、「記録したものだけが記憶される」という言葉の真意をほかのどの国の政府よりも知り抜いている。
記録されなければ記憶されない、その一方で、一度記録にさえ残してしまえば、後に「事実」としていかようにも使うことができる――。
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若宮敬文■ドキュメント 北方領土問題の内幕
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ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞諸島及び色丹島を日本に引き渡すことに同意する。
ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。(日ソ共同宣言1956年10月19日)
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野口武彦■花の忠臣蔵
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覚悟したほどには濡れぬ時雨かな〔…〕
この「おかしさに」という感想はたんに拍子抜けがしたというだけのことだろうか。そうではあるまい。
ただ予想と違ったというばかりでなく、内蔵助は上杉勢が吉良邸に駆けつけなかったことにいたく失望している気配なのである
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井出幸男■宮本常一と土佐源氏の真実
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宮本が偉大な民俗学者であったことは疑いを容れないが、むしろその本来の素質は、作家的あるいは詩人的とも言えるところにあったのではないか。
採集ノートを焼失したという学問としてはマイナスの物理的条件が、宮本においてはこの場合、逆に完璧な詩的文学作品の完成をもたらした。
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嵐山光三郎■漂流怪人・きだみのる
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停滞と沈澱を嫌うきだみのるは流浪生活を完結させるために定住せず、 家から去り、妻から去り、文壇から去り、空漠の彼方へむかって歩みつづけていた。
そこにミミくんがいた。
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鈴木嘉一■テレビは男子一生の仕事――ドキュメンタリスト牛山純一
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「視聴者はこのテレビ中継で何を見たいのだろう。それは花嫁の顔ではないか」
「我々は美しく古式豊かなパレードの全容をとらえようとして、パレードの本当の中心である『花嫁さん』という単純な対象を見落としているのではないか」
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都築 響一 ■圏外編集者
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ほとんどの出版社にとってはまだ、紙の本を作って、それを電子書籍化することが「新しい挑戦」という程度だろうが、もう一歩先の段階がきっとやってくる。それもまもなく。すでに音楽がそうなってきているように、最終的には本も「クラウド化」する時代がかならず来る。1冊ずつ本を買わなくても、たとえばウェブ図書館のように、月額使用料を支払えば読み放題のような。
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仲村清司・藤井誠二・普久原朝充■沖縄 オトナの社会見学R18
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僕が嘉数高台に上ったのは、小中学生時に授業の一環で訪れて以来です。当時は普天間基地返還の話題はなかったので、基地の見渡せるスポットというよりは、沖縄戦で多くの死傷者を出した激戦地として教わりました。
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清武英利■プライベートバンカー――カネ守りと新富裕層
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そういう方に私は『我慢できませんよ』と言います。『オフショアブームに乗るのはいいが、税金ゼロのために人生後半の貴重な5年間を何もしないで毎日ぼーっとしていられるんですか』と。
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工藤美代子■後妻白書――幸せをさがす女たち
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大事なのは夫が自分と巡り合う前に、すでに人生のワンラウンドを通過しているという事実だ。どうしても共有が不可能な過去の時間の清算は、しかし、後妻も参加しなければならないのだ。特に子供がいた場合はそうなる。
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ところでノンフィクションの世界は、大震災、フクシマ原発など格好のテーマが一段落したため、低調であった。出版業界の低落傾向、なかでも売れないノンフィクション分野は、講談社の『G2』19号終刊号で「1月に新たな形で再出発する予定です」と告知していたものの何も現れなかった(まさかリニューアルしたネットの『現代ビジネス』がそれではないでしょうね)。講談社にぜひやってほしいのは「現代新書」にG2の書き手たちをどんどん取り込んで、「現代新書ノンフィクション」として書店店頭の“滞留時間”を長くし、読者の目に留まるようにしてほしいものだ。
今年の特色は、内澤旬子『漂うままに島に着き』、稲垣えみ子『魂の退社――会社を辞めるということ。』など、“私ドキュメント”の増加。加藤達也『なぜ私は韓国に勝てたか―朴槿恵政権との500日戦争』、植村隆『真実――私は「捏造記者」ではない』、小保方晴子『あの日』など、“自己弁明本”の増加ではないか。
当方、今年は体調を崩し、ブログを半年休んだためブログでは紹介せず、また2016年ベスト10には選ばなかったものの、十分に楽しませてくれたノンフィクションは、以下の通り(いずれも2016年刊)。
★福田ますみ『モンスターマザー―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い』2月・新潮社
★植村隆『真実―私は「捏造記者」ではない』2月・岩波書店
★ふるまいよしこ『中国メディア戦争―ネット・中産階級・巨大企業』5月・NHK出版
★森健『小倉昌男祈りと経営―ヤマト「宅急便の父」が闘っていたもの』1月・小学館
★前川仁之『韓国「反日街道」をゆく―自転車紀行1500キロ』4月・小学館
★戸田学『上方漫才黄金時代』6月・岩波書店
★稲垣えみ子『魂の退社―会社を辞めるということ。』6月・東洋経済新報社
★山川三千子『女官―明治宮中出仕の記』7月・講談社学術文庫(原本は1960年)
★国末憲人『ポピュリズム化する世界』9月・プレジデント社
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