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2017.06.29

奥野修司★魂でもいいから、そばにいて――3・11後の霊体験を聞く …………☆2011.3.11版遠野物語

20170629

 

 この世に存在するのはモノだけではない。ある人を慈しめば、慈しむその人の想いも存在するはずだ。

  この世界を成り立たせているのは、実はモノよりも、

 慈しみ、悲しみ、愛、情熱、哀れみ、憂い、恐れ、怒りといった目に見えない心の働きかもしれない。

  だからこそ人の強い想いが魂となって、あるいは音となって、あるいは光となってこの世にあらわれる――。なんてことを、僕は夢うつつに妄想しながら、被災地で起こった不思議な体験のことを振り返っていた。

 

 魂でもいいから、そばにいて――3・11後の霊体験を聞く |奥野修司 |新潮社 |2017年2月|ISBN:  9784104049028 |○

  1万8千余人の命を奪った東日本大震災。被災地で“亡き人との再会”という不思議な体験が語られていると聞き、著者は3年半にわたって取材を続ける。

  ――石巻では、車を運転中に人にぶつかった気がするという通報が多すぎて、通行止めになった道路もあると聞いた。まるで都市伝説のような恐怖体験だが、当時はこんな話は掃いて捨てるほどあったのである。(本書)

  また「石巻のあるばあさんが、近所の人から『あんたとこのおじいちゃんの霊が大街道(国道398号線)の十字路で出たそうよ』と聞いたそうだ。私もおじいちゃんに逢いたいって、毎晩その十字路に立っているんだそうだ」という話が紹介されている。

  3.11で当方がもっとも気になっているのは、その石巻市の大川小学校である。全校児童108人のうち74人が犠牲となった“人災”ともいえる大惨事と、その後の市の不遜な対応である。当時2年生だった広夢くんも犠牲者の一人。著者は両親に会いに行く。

  広夢くんと莉希くん(当時幼稚園児)は鉄道ファン。家にはプラレールやNゲージのジオラマがあった。プラレールは、車両をレールにセットし、ボタンを押すと、「ポワ〜ン、一番列車が参ります。ジリリリリリ……」、録音されたアナウンスが流れる。「乗り降りの際は、お足元にご注意ください。当駅では終日禁煙となっております」。二人は夢中になって遊んでいた。

  ――「ああ、家族全員が隣の部屋でテレビを見ていたときです。これが、これが勝手に鳴ったんです」〔…〕

「それまで広夢と莉希がよくこれを鳴らして遊んでいたんです。音が聞こえるから、二人で遊んでいるのがわかるんです。だから、その日も隣の部屋で遊んでると思ったのですが、よく考えたら、震災後だから広夢がいるわけないし、莉希は私の横でテレビを見ているんです。『あれ、ちょっと待てよ、隣の部屋、誰もいないよね。なんで勝手にアナウンスが流れているの?』

 それでいっぺんに家族が顔を見合わせて『ええっ?』となったんです」(本書)

  兄から届いたメール“ありがとう”、『ママ、笑って』――おもちゃを動かす3歳児、霊になっても『抱いてほしかった』、『ずっと逢いたかった』――ハグする夫、深夜にノックした父と死の「お知らせ」など、多くの“霊体験”が語られる。

  じつは著者には、『看取り先生の遺言――がんで安らかな最期を迎えるために』(2013)という著書がある。宮城県で在宅緩和医療を先駆的に行った岡部健医師と、死の間際にすでに亡くなった人物が現れる「お迎え」という現象を扱っている。

 「お迎え」と「霊体験」――。東北には霊魂を信じる感覚が今も息づいているからではないだろうか、と著者は書く。『遠野物語』第99話を持ち出すまでもなく、この息づかいは3.11版遠野物語である。

奥野修司□看取り先生の遺言――がんで安らかな最期を迎えるために  

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