松尾貴史◎違和感のススメ
最近、東武鉄道が「駅や車内でベビーカーをご利用になるお客様は周りのお客様に配慮し、十分ご注意ください」という表示を電車内で出した。
なるほど、そういう考え方の会社なのか。
「駅や車内でベビーカーをご利用のお客様には配慮し、安全のためのサポートをよろしくお願いいたします」ではないのか。
★松尾貴史◎違和感のススメ 2019.02/毎日新聞出版
本書は2012年から毎日新聞に連載した辛口コラム。この間社会の雰囲気は、「疲弊であったり破壊であったり腐敗であったり、つまりは『退化』としか思えない惨状です」と。圧倒的に多いのは安倍内閣批判の「第1章永田町をめぐるあれこれ」だが、ここでは「第2章不健全な社会」から、もう一つ。
――2012年12月19日に亡くなった中沢啓治さんの戦争・被爆体験を元につづられた漫画『はだしのゲン』を、(タイミングは偶然だろうと思うが)その12月に鳥取県松江市の教育委員会が各学校に、児童や生徒が自由に閲覧・借り出しができない閉架措置を要請、所蔵している全校が承諾していたことがわかった。
理由は、「小学生には描写が過激」ということだそうだ。しかし、過激になるのは当たり前ではないか。戦争というものの恐ろしさを子供たちに知ってもらうのに、「戦争は怖いよ。命は大切だね。平和が一番だね」と何の刺激もなしに教えればこと足りるとでもいうのだろうか。
戦争体験者がどんどん亡くなっていく中、これから社会を担う子供たちが少しでもその凄惨さを知る機会を奪うデメリットのほうがいかに大きいか、考えていただきたいものだ。
――鳥取県松江市の教育委員会が、『はだしのゲン』を開架方式にして、子供たちに自由に読ませないようにしたが、その措置を撤回したという。
その理由に、「手続きに不備があった」と浅ましい言い訳をしているが、そういう問題ではないだろう。戦争の恐ろしさを知る機会を奪うことが間違いなのに、手続きのせいにしている。
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