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2020.07.01

中西進・鵜飼哲夫★卒寿の自画像―わが人生賛歌―     …………“令和”万葉学者の語り下ろし自伝

202004


 令和元年12月に、東京で開かれた第34回全国高等学校文芸コンクールの表彰式に呼ばれ、「青春の自画像とは」と題して高校生に話をしました。  

 青春の自画像の特色として三つをあげました。第一が、生きている証としての命の宿った表現をすること、第二に、これから生きていく未来を語ること、そして第三は含羞です。

 青春時代は、未完成ゆえに未来に開かれています。そして未完成ゆえに不安があり、そこにはにかみ、ためらいが生まれます。そして、この含羞があるゆえに人は学び、人の話に耳をすませ、それが令和という元号に示されている令(うるわ)しい和のある時代を拓いていく。そのことを若い高校生に伝えました。〔…〕

 はにかみは残り続けた方がいい。なぜなら恥ずかしさとはやさしさだかです。〔…〕

 恥ずかしさ、ためらい、不安感、そして未達成感があるからこそ、人は奥ゆかしくなり、やさしくなるのではないでしょうか。

やさしいは漢字で「優」と書きます。人を思い、自らを憂うる、それがやさしさであり、含羞です。

 

★卒寿の自画像―わが人生賛歌― /中西進・聞き手 鵜飼哲夫/2020.04/東京書籍


 本書はあの令和の“名付け親”万葉集研究の第一人の中西進(1929~)が、読売新聞記者の鵜飼哲夫のインタビューに、自らの半生を語ったもの。著者は100冊を超える著書をもつが「著者あとがき」以外のすべては鵜飼記者の筆による。

 当方、興味があったのは、先に読んだ“昭和史の語り部”半藤一利(1930~)の自伝『半藤一利 橋をつくる人』(2019)に、大学同期の中西進のことが語られており、その部分を本書でどう扱われているかだった。半藤の話は、

 ――卒業論文のテーマ提出のときになって「万葉集にみる大化の改新と壬申の乱」という主題だと豪語したら、仲のいい同級生の何人もが「万葉集はやめろ」と言う。「なぜ?」「同級生に万葉集のお化けがいる。中西進だ。あいつは小学生のときから万葉集を全部暗記している。あいつと比べられたら卒業も危うくなるぞ」(同書)

 というもの。ところが本書によれば、実際に万葉集をはじめて学んだのは戦後の旧制中学時代。また大学の卒論もテーマは万葉集ではなく、「上代文藝に於ける散文性の研究」というもの。もっとも、

――「中西は、膨大な卒論の手書き原稿を大八車で運んで、(本郷の)菊坂を上れなかった」という伝説がありますが、それは嘘です()。(本書)

 この卒論、400字詰674枚もあり、つい最近、卒寿記念として出版されたという。

 また、漢字のうんちくが語られており、たとえば万葉集に愛の歌、死の歌のまえに「雑歌」が置かれているのは、

 ――中国では「雑」はすばらしい言葉で、辞書には「彩なり」とあり、多彩なすぐれたものを意味します。〔…〕ですから、「雑歌」とは、雑多の歌ではなく、華やかなとりどりの歌なんです。だからこそ巻頭を飾ることになったのです。(本書)

 100冊を超える著作のうち、当方は数冊しか読んでいない。なかで『「旅ことば」の旅』(2017)がいちばん気に入っている。

 

 

中西進★「旅ことば」の旅

AMAZON中西進★卒寿の自画像

 

 

 

 

 

 

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