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2020.07.24

轡田隆史★100歳まで読書    …………春のうららの隅田川の「花」は「源氏物語」胡蝶の巻に元歌がある

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   その昔、半藤(一利)さんが編集者であったころ、神戸・三宮の居酒屋で、作家の田辺聖子さんとしばしば呑めや歌えやをやったそうだ。
そんなある夜のこと、


「半さんも呑んでばかりおらんで、何か歌ったらどや」と田辺さんにいわれて、よっしゃと歌ったのが「花」だった。

 すると田辺さんが、びっくりするようなことをいったのである。
「その歌のもとに『源氏物語』があるの、ご存じだっしゃろか」

 半藤さんは目を丸くするばかりだったけれど、田辺さんは種明かしをしなかった。

 ――3章 こんな読み方、楽しみ方もある!

★100歳まで読書 「死ぬまで本を読む」知的生活のヒント /轡田隆史 /2019.11 /三笠書房


 上掲は半藤一利「歴史探偵おぼえ書き」に出てくる話。
「花」とは、明治33(1900)年に武島羽衣作詞、滝廉太郎作曲の名曲。

  春のうららの隅田川
  のぼりくだりの船人が
  櫂のしずくも花と散る
  ながめを何にたとふべき
 
 この歌のもとが「源氏物語」だと田辺聖子が言うのだが、のちに半藤はその謎を解く。源氏物語胡蝶の巻。そこにこんな歌がある。

 春の日のうらゝにさしてゆく舟はさをの雫も花ぞ散りける

 本書は轡田隆史(くつわだたかふみ、1936~)83歳による「より深く、面白く、豊かに読書を味わい尽くす」ためのノウハウをあますところなく伝授してくれる1冊(ちょっとおせっかいな部分もあるが)。
 以下も本書から。

 ――年を取ってからの読書は、若いころとは違って、読むほどに、ごく自然に背景となっている歴史が浮かび上がってくる。その歴史のなかに、自分の存在がおぼろげに見えてくるのが面白い。

 ――本を読んでいるとき、人は孤独である。孤独にならなければ、本は読めない。それは、自分のこころの奥を静かにのぞきこむ、貴重なときであるからだ。

 ――感動こそ、精神の若返りの最高の秘訣なのだ。
だからこそ、死ぬまで本を読むのである。

 

Amazon轡田隆史★100歳まで読書



 

 

 

 

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