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2020.11.27

高橋ユキ★つけびの村――誰が5人を殺したのか?           …………村の“噂”、ネットの“噂”

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 まるで金峰地区を乱舞する大量の羽虫のように、ここの事件の周りには、うわさ話が常にまとわりついていた。

「つけびして煙り喜ぶ田舎者」。

 始まりは、ワタルの家の窓の貼り紙からだった。事件当時、この不気味な川柳は犯人の犯行声明だと騒がれた。

 わずか12人が暮らす村で5人もの人々が殺害された事件は、一般のメディアだけでなく、ネットユーザーにも火をつけたのである。

 そうこうするうちに「村八分」のうわさが“祭り”を呼んだ。

 

★つけびの村――誰が5人を殺したのか? /高橋ユキ /2019.09 /晶文社


 2013年7月に山口県周南市で一夜にして5人の村人が殺害された“山口連続殺人放火事件”。犯人の家に貼られた川柳は“戦慄の犯行予告”として世間を騒がせた。

  著者は、ネットとマスコミによって拡散された“うわさ話”の真相を探る。

「あとがき」の以下の部分を記録にとどめたい。

 ――いま、普通の“事件ノンフィクション”には、一種の定型が出来上がってしまったように感じている。犯人の生い立ちにはじまり、事件を起こすに至った経緯、周辺人物や、被害者遺族、そして犯人への取材を経て、著者が自分なりに、犯人の置かれた状況や事件の動機を結論づける。そのうえで、事件が内包している社会問題を提示する。

 これが昨今のスタンダードだ。介護殺人や少年犯罪をテーマにした書籍など、世に出回っている事件ノンフィクションを数冊読んでもらえれば、だいたいいがこのスタイルであることに気付くだろう。

 いつの頃からか、出版業界は、このスタイルにはまっていない事件ノンフィクションの書籍化には難色を示すようになってしまった。ノンフィクションは新書と同様、読み手に何らかの“学び”や“気づき”を与えるものでなければならないというのである。

 私も当初は、そのスタンダードなスタイルにはめ込むようにと取材を重ねていた。そんな中で、ワタル本人が事件について正直に語ることのできない状態にあることを知り――取材して記事を書き、それを売ることで生活している身としては――ひどくがっかりしたものの、同時にこれまでとは違う、もう一つの切り口に気が付いたのだった。(本書)

 

Amazon高橋ユキ★つけびの村――誰が5人を殺したのか? 

 

 

 

 

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