斎藤美奈子★忖度しません …………令和がスタートしたので昭和、平成を検証してみる
なぜ野党は選挙で負け続けているのか。なぜ市民運動の現場には、高齢者しかいないのか。
それは日本人が劣化したからだ。若者の意識が低いからだ。
と、もしかしてあなた、思ってません? だからダメなんですってば。リベラルが後退戦を強いられているのは、相手がバカだからではなく、こちら側に魅力がないからです。
自分はぜったい正しくて、自分以外はみんなバカ。愚かな大衆諸君に、賢い私が正しいことを教えてあげる。そんな不遜な人たちに、だれが与したいと思います? 民主主義の危機をいいつのる人々のやり方は、ぜんぜん民主的じゃないんだよね。
★忖度しません /斎藤美奈子 /2020.09 /筑摩書房
同じテーマの3冊の本をとりあげ、社会時評的なコメントを加えたシリーズの新刊。
たとえば吉崎達彦『1985年』、竹内修司『1989年』、速水健朗『1995年』の3冊から戦後日本のピークはいつだったかを考える。
若竹千佳子『おらおらでひとりいぐも」、高村薫『土の記』、橋本治『九十八歳になった私』の3冊から老境を描く「玄冬小説」を考察する。
安田浩一・倉橋耕平『歪む社会』、樋口直人・永吉希久子ほか『ネット右翼とは何か』、山崎雅弘『歴史戦と思想戦』の3冊からネトウヨvsリベラル「攻防の25年」を顧みる。
池澤夏樹訳『日本文学全集01 古事記』、小野寺優『ラノベ古事記』、こうの史代『ぼおるぺん古事記(1)天の巻』の3冊から「現代語訳『古事記』の奇想天外」な最近の古事記本の世界を覗き見る。
など、多彩なテーマのブックガイドである。
――看過できないのは「負の歴史」を見ようとしない歴史修正主義の蔓延である。当初は気にもとめられなかった修正主義者たちの言説は、気がつけば政財界の奥深くに入り込み、学校教育や外交にまで影響を与えている。原因はどこにあったのか。
平成が終わって令和がスタートしたこのタイミングで、歴史と呼ぶには近すぎる過去を検証してみるのも悪くないだろう。(本書)
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