吉田豪★書評の星座――吉田豪の格闘技本メッタ斬り2005-2019 …………いいたい放題の“明るい書評”本
自分の原稿を読み直してみてビックリ。これはちょっと口が悪すぎるでしょ!
とにかく徹底した個人攻撃。プロだと思えない書き手は容赦なく糾弾するし、事実誤認も指摘せずにはいられないしで、めんどくさいことこの上ない。自分がこんな人間だったとは、自分でもすっかり忘れてた!
そう、ボクは基本的に平和主義者で喧嘩も好きじゃないはずなのに、プロとしてどうかと思う人間に対してだけは昔から厳しかった。
おそらく、この仕事を始めたばかりのとき、まだ年齢的にも若くて出版の仕事を始めて数年ってぐらいで、プロレスや格闘技を学習し始めてからも日が浅かったからこそ、
自分がそれほど詳しくないジャンルでデタラメなことを書いている年上の人間が許せなかったんだと思う。〔…〕
もちろん選手に対してはリスペクトがあるので、そこは基本的に批判せず、あくまでも同じ土俵上にいる書き手や編集のみを叩くというスタンスで、だ。相手は同業者で、しかも年上で、もつと言うと業界的にも立場が上だったりするから、そんなの容赦するわけがない。
★書評の星座――吉田豪の格闘技本メッタ斬り2005-2019 /吉田豪 /2020.02 /ホーム社
2005年から2019年までに書いた格闘技本の書評165冊分が500ページ近い大冊になった。
メッタ斬りの毒舌書評もさることながら、なによりもすごいのは、帯のキャッチコピーにあるように、「この1冊でわかる格闘技『裏面史』!」であることだ。
大量なのですぐには読めない。で、当方がすでに読んだ本の書評を中心に見た。
*
増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』
本書は「木村政彦を守るためには、どんな邪魔者でも排除する覚悟」で書かれた本なんだと思う。そして、その過程で増田俊也氏が力道山のことを認めるようになっていくのが美しいのである。
柳津健『完本1976年のアントニオ猪木』
「歴史書」の文庫版が登場。傑作と名高い単行本に大幅加筆しているというので、きっそく2冊を並べて全ページ読み比べてみた。
柳澤健『1964年のジャイアント馬場』
ノンフィクションは公平ではなく、どちらかに肩入れして書くほうが面白いと痛感させられたのであった。
柳澤健『1984年のUWF』
これは、あまりにも前田日明史観が定説になりすぎていたUWFを、柳澤健氏が佐山聡史観で捉え直した一冊。
田崎健太『真説・長州力1951-2015』
「プロレスを描くことは、果実を求めて森に行ったつもりで、マングローブの密林に踏み込んだようだった。取材を進め、資料を集めてもどこまで信用していいのかはっきりしない。足を前に進めと、ずぶずぶと泥の中に沈み込んでいくのだ」
アマレスというガチの世界で生きてきた長州と同じように、ノンフィクションというガチの世界に生きてきた人間が、プロレスという不思議な世界に翻弄されまくるのがたまらないのである!
小島一志・塚本佳子『大山倍達正伝』
この本には衝撃的な情報も多々含まれているのに、ページ数(624ページ)が無駄に多すぎるせいで肝心の衝撃が全く伝わってこないのである。
吉田豪『吉田豪の喋る‼道場破り』
手前味噌で申し訳ないが、「プロレスなんてただの八百長裸踊り」だと思っているような格闘技好きの人にこそ、『吉田豪の喋る‼道場破り』を読んでいただきたいと思う。
なんと自著の書評である。
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