11/癒しの句・その他の詩歌◆T版2020年…………◎長嶋有・俳句は入門できる◎今野敏・清明 隠蔽捜査8
11/癒しの句・その他の詩歌
長嶋有★俳句は入門できる 2019.12/朝日新聞出版
今の俳句の世界に欠けているものは、「優れた俳句」でも「若手の存在」でもない。
「優れた俳句を紹介する存在」や「批評」でもない。
欠けているのは「逸話」だ。
面白い世界、多くの人の心を長く灯し続け、熱く語られる醍醐味のある世界には、必ず多くの「逸話」がまつわる。
漏れ出る。
*
ラグビーや相撲は中年をすぎたらもう出来ない。野球をするのも、けっこう大変だ。俳句はいつからでも入門できる。そして、その入門する世界は「五七五」や「季語」のもたらす醍醐味をひっくるめ、もっと大きな混沌と豊饒さをたたえて、皆さんを待っている。(「はじめに」)
11/癒しの句・その他の詩歌
今野敏★清明 隠蔽捜査8 2020.01/新潮社
――竜崎は言った。
「『清明』ですか……」
呉はにこやかな表情になって言った。
「そうです。杜牧の詩です。とても美しい風景が頭に浮かびます」〔…〕
清明の時節、雨紛紛(ふんぷん)。
路上の行人、魂(こん)を断たんと欲す。
借問す、酒家いずれの処にかある。
牧童、遥かに指さす、杏花の村。
清明時節雨紛紛
路上行人欲断魂
借問酒家何処有
牧童遙指杏花村
七言絶句だ。その詩を読み下そうと、竜崎が苦労していると、滝口が再び口を開いた。
「清明の時節、雨紛紛(ふんぷん)。路上の行人、魂(こん)を断たんと欲す。借問す、酒家いずれの処にかある。牧童、遥かに指さす、杏花の村。
清明の季節、つまり春ですね。雨がしとしと降っていて、道行く私はひどく落ち込んできた……。牛飼いの牧童にちょっと尋ねる。どこか酒が飲めるところはないだろうか、と。牧童は、はるか向こうの杏の咲く村を指さす……。
いや、実に味わいのある詩ですね。私の好きな詩です」
竜崎は、滝口の意外な一画を知り、驚いた。
呉がうれしそうな顔になって言った。
「あなたは詩心がありますね。そういう人は信じられると言います」
*
竜崎伸也は神奈川県警刑事部長に異動する。着任早々、県境で死体遺棄事件が発生、
被害者は中国人と判明。公安と中国という巨大な壁が立ちはだかる。
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