01/ジャーナリスト魂・編集者萌え◆T版2020年…………◎三浦英之・白い土地◎柴山哲也・いま、解読する戦後ジャーナリズム秘史◎★週刊読書人・追悼文選―50人の知の巨人に捧ぐ◎柳澤秀夫・記者失格◎松井清人・異端者たちが時代をつくる◎芝田暁・共犯者 編集者のたくらみ◎寺崎央・伝説の編集者H・テラサキのショーワの常識
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
三浦英之★白い土地 ルポ福島「帰還困難地域」とその周辺 2020.10/集英社クリエイティブ
内閣総理大臣・安倍晋三が東京オリンピックの延期を正式に発表したのは、彼の福島県浪江町の視察から17日が過ぎた2020年3月24日の夜だった。
首相官邸で開かれたぶら下がりの場で、安倍は世界的に拡大し始めた新型コロナウイルスの回避を延期の理由に挙げる一方、2021年夏に開催される予定になった大会における新たな政治的な意味を付け加えることも忘れなかった。
「人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、完全な形で東京オリンピックを開催するためにIOCと緊密に連携をしていく。日本として開催国の責任をしっかりと果たしていきたいと思います」
インターネット中継で総理大臣の発言を聞きながら、私はなぜかそのとき、清々しい気持ちになった。
総理大臣が語る東京オリンピックにはもう「復興」という形容も「被災地」という地名も含まれていない。
それは政府がこれまで執拗に提唱してきた「復興五輪」という概念が過去のものになり、別の物へとすり替わった瞬間でもあった。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
柴山哲也★いま、解読する戦後ジャーナリズム秘史 2020/ミネルヴァ書房
「朝日新聞阪神支局襲撃」事件で殺傷された記者銃撃事件が、日本の警察捜査と新聞社取材の総力を挙げたにもかかわらず解決しなかったことは、正直、新聞記者の限界を感じた。
言論機関を襲ったテロ犯がなぜ逮捕されないのか。先進国としてあり得ないことだと思った。
* 敗戦直後の日本の言論と新憲法発布/憲法改正論の台頭から、阪神・淡路大震災から東日本大震災へ/小泉ポピュリズム政治の誕生まで、ずらりと目次が並ぶが、元朝日記者の本書はどう読んでも、タイトルの「秘史」は「私史」の間違いでは?
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
「週刊読書人」編集部★週刊読書人追悼文選――50人の知の巨人に捧ぐ /2020.01/読書人
昔の記事はすでに新聞の形でしか残っておらず、その紙面も劣化が甚だしい。
うかうかすると消尽しかねない、60年前からの記事を保有するために、記事を一つずつテキストデータ化し、アーカイブとして後年の資料として活用していかなくてはならなくなった。
そのために昨年部署を新設し、現在進行形で作業を進めることとした。本書「週刊読書人追悼文選』はその過程の一環で生まれた書籍である。
*
書評専門紙「週刊読書人」がこれまでに掲載した510名の著名人にあてた追悼記事を厳選し111編を収録したもの。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
柳澤秀夫★記者失格 /2020.03 /朝日新聞出版
「あさイチ」のMCをやめた直後、「この8年間で俺の世界観は広がった」とかみさんに言ったら、
一言、「人間らしくなったよ」と返ってきたことを、いまも鮮明に覚えている。
*
こうした自らの不甲斐なさを意識しながら、私は記者と名乗っていいのか? 記者としてその名に恥じない生き方をしてきたのか? そんな自問自答をまとめたのがこの本である。〔…〕
嘘偽りなく書に語ろうと思っていても、無意識のうちに自分を少しでも良く見せよう、あるいは正当化しようとする、そんなもう一人の私の姿が見えてきて、どうしても自己嫌悪に陥ってしまう。(まえがき)
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と書きながら、ジャーナリスト論になると、どうしても建前に終始する。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
松井清人■異端者たちが時代をつくる /2019.07/プレジデント社
私には一つの仮説がある。
少年Aが97年に起こした惨劇の原点は、95年の阪神淡路大震災にある、というものだ。
Aはそんな供述はしていないし、鑑定書にも記されていない。一部の新聞が大震災との関連を報じてはいたが、具体的な根拠は何も書かれていない。
しかし、『週刊文春』(97年7月10日号)が報じた以下のエピソードが、ずっと私の心に引っ掛かっていた。
〈阪神大震災はA少年が6年生の1月に起こった。
同級生が振りかえる。
「A君と悲惨な現場を歩いている時、僕たちはみんな倒れている人たちから思わず目をそらしてしまった。だけどA君だけは『あの人は足をケガしている』とか『頭から血が出ている』と冷静に観察しているんで、ビックリしました」〉〔…〕
神戸の街で見たリアルな遺体が、神戸に住む少年の記憶に刻み込まれ、ある日突然、フラッシュバックしたのではないだろうか。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
芝田暁■共犯者 編集者のたくらみ /2018.11/駒草出版
編集者であれば、「この作家」に「このテーマ」で書かせたいというたくらみが、必ずいくつかあるはずだ。
それをいつ使うかはわからない。1年後なのか、20年後なのか。何となく腹蔵しておくと、ある日、千載一遇の機会が訪れる。
*
書籍の編集者の仕事は基本、著者はひとり、編集者もひとり。つまり一対一の仕事だ。
たったひとりの著者の頭の中にあった「たくらみ」が活字で表現されて一冊の本になり、たくさんの人の手に渡って読み継がれる。何という贅沢な「たくらみ」ではないか。
編集者は著者が「たくらみ」を遂行する一部始終に立ち会うのが仕事だ。だとすると世間に一石を投じる「主犯者」に加担する「共犯者」こそ編集者を表す的確な言葉であろう。(「まえがき」)
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
寺崎央■伝説の編集者 H・テラサキのショーワの常識 /2016.12 /エンジェルパサー
大浄敬順なる人物。〔…〕
歩くこと、途中で野点をやること、名所旧跡には必ず落書きすること、これを何よりの楽しみ。元気元気。そして他人には厳しいけれど自分には大甘。こういう老人にわたしはなりたい、と思うね。もう十分なってます?
51歳で寺の住職を退いて隠居暮らしを始め大浄敬順なる人物の逍遥記『遊歴雑記』がモチーフ。
元気なおやじで、不良老年してるわけだ。いつも茶道具と菓子を持ち歩いて、これはと思う江戸郊外に遭遇するとすぐに野点が始まり句を詠むことになるが、これはウオーキングの副産物。歩くのが体にいいことを心得ていて、歩くこと、途中で野点をやること、名所旧跡には必ず落書きすること、これを何よりの楽しみにしていたらしい。元気元気。
多趣味多芸で元気だけど、ちょいと偏屈で孤独大好き、といって家にいるのは大嫌い。そして他人には厳しいけれど自分には大甘。
こういう老人にわたしはなりたい、と思うね。もう十分なってます?
*
本書は、ある意味で、テラさんの自伝でもある。幼少時代から最近まで、仕事や趣味を通じて、どんなものに興味を持ち、熱く接し、生渡の大半の、「ショーワ」を生きてきたかがわかるからだ。
テラさんばかりでなく、さまざまなジャンルのマニアックな人たちにとって、どこまでも知識欲を満足させ、趣味の世界を楽しむことのできる時代があったのだ。(「はじめに」)
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