13/言葉コレクション◆T版2020年…………◎小川糸・ライオンのおやつ◎岸本佐知子・ひみつのしつもん
13/言葉コレクション
小川糸★ライオンのおやつ 2019.10/ポプラ社
おやつは、体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになるのは事実です。
おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。
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余命を告げられた雫は、残りの日々を瀬戸内の島のホスピス、で過ごす。そこで*毎週日曜日、入居者がもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があったー。終の島のライオンの家でのスタッフ、ゲストとの1か月をあたたかい筆致で描いたベストセラー。以下、本書から……。
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――でも、もう十分がんばっている人に、さらにがんばれというのは相手を追い詰めるだけだから、がんばってという言葉は使わない方がいい、と言われていた。
確かに、そうかもしれない。もうがんばりようがない人に、更にがんばれと叱咤激励するのは、酷だ。でも、自分ががんばっている時、がんばって、と応援されるのは、私自身は嬉しかったし、励みになった。
――今というこの瞬間に集中していれば、過去のことでくよくよ悩むことも、未来のことに心配を巡らせることもなくなる。私の人生には、「今」しか存在しなくなる。
そんな簡単なことにも、ここまで来て、ようやく気づいた。だから、今が幸せなら、それでいい。
――よい旅を!
亡くなった方には、私、いつもこの言葉を贈るようにしています。
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岸本佐知子★ひみつのしつもん 2019.10/筑摩書房
たとえば空から落ちてくる雨粒の一つに住んでみたい。
360度透明なドームの中に浮かんで、歪みながらつぎつぎ変わっていく外の景色をのんびり眺めて暮らす。何千メートルの距離を地面まで落ちるあいだに、雨粒の中では百年が経っている。
――「エクストリーム物件」
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奇想天外、抱腹絶倒のキシモトワールド、「ちくま」連載エッセイ3冊目。もう20年近く連載が続いている。
もう一つ、紹介
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――「完璧」の「璧」は「壁」ではなく、自分のイメージしていた高くて傷ひとつない鉄の壁はまちがいたったと知ったとき。それら成長の瞬間は今も自分史に燦然と刻まれている。
しかし成長は、いったんしてしまうとその後が存外つまらない。〔…〕
「完璧」の“璧”のこと“壁”って思ってない?」などと得意気に言って、人々の蒙を啓きつつ先に成長した者の優越感に浸ろうと試みるものの、驚くことにたいていの人は私より先にその事実を知っており、優越感どころか逆に見下されたりする。つまらない。
――「成長の瞬間」
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