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2020.12.19

07/老人たちの賛歌◆T版2020年…………◎早川さくら・早川一光の「こんなはずじゃなかった」◎三浦耕喜・わけあり記者の両親ダブル介護◎石原慎太郎・死者との対話◎内館牧子・すぐ死ぬんだから

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07/老人たちの賛歌

早川さくら★早川一光の「こんなはずじゃなかった」――わらじ医者からの最期のメッセージ―― /2020.02 /ミネルヴァ書房

 

寝たきりになった僕は、毎日何していると思?

「しんどーい」

「さみしーい」

これを連発しているんや。

家族はうるさいと思ってるやろなあ。〔…〕

「たとえ体が寝たきりになっても、心まで寝たきりにならないようにしてください」

僕が、講演でよく話していた言葉です。

「そんなことできるか。やれるならやってみい」

今僕は、昔の自分に向かって怒鳴っている。

同時に、ややもすると「心の寝たきり」になりそうな自分が、情けなくなってしょうがない。そこが悲しい。

 

*

早川一光(1924~2018)

 京都の堀川病院の院長、理事長として住民主体の地域医療を進め、美山診療所所長として「わらじ医者」と慕われた。「わらじ医者 京日記 ボケを看つめて」(1979)など著書多数。KBS京都ラジオで30年にわたり「早川一光のばんざい人間」のパーソナリティー。

 

「畳の上の養生は極楽」と在宅療養を唱えた。

――「早川はん、死なはったんやて」

「あれ、このあいだまであんなに元気やったのに」

と、皆さんに言われるかもしれません。

 と語っていた早川医師が、3年半も“畳の上の養生”をしていた。

胸椎の圧迫骨折

多発性骨髄腫

夜間せん妄

ポートという点的針の受け口を埋め込む手術

 

あの早川医師が!

あの早川医師の家族が!

と思う“こんなはずじゃなかった”晩年である。

 

「私たち人間が死を目前にして、最後に出会う恐怖、孤独、寂蓼。これも人の真理。そう思い、書き続けました」と著者。

 これこそ早川医師の“真実”の贈り物であろう。

 

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07/老人たちの賛歌 

三浦耕喜★わけあり記者の両親ダブル介護 /2020.01/春陽堂書店

 

 本書の目的は、まとめてしまえば、こういうことを訴えることです。

「介護をする側の苦労や辛さは、

介護をされる側が歩んできた人生について関心を持つことにより、

ある程度、場合によっては相当程度、軽減される」

 

三浦耕喜(1970~)中日新聞生活部記者。

  2006~09年までベルリン特派員を経て政治部に帰任。報道の最前線で活躍するも、過労でウツとなり5カ月間休職。

 復帰後、政治部から生活部へ異動した頃、老老介護を担っていた母が認知症を発症。遠距離介護が始まる。両親の介護を理由に転属を申し出て、14年に岐阜支社デスク、15年に名古屋本社生活部に異動。

 その1年後には、自身が難病「パーキンソン病」の診断を受けた。

 

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07/老人たちの賛歌

石原慎太郎★死者との対話 /2020.05/文藝春秋

 

 この私が死期の迫ったこの齢で今抱えている折り合いのつかなさへの、恐れなどでは決してない、

ただのいまいましいほどの焦慮など、

私の死んだ後他の誰にもわかりはしまい。

 それを抱きながら薄い氷の上を歩むような恐れとも焦りともつかぬこのはかなさは一体何に対する代償なのだろうか。それでも死線を超えた私はその上をおそるおそる歩いては行くが。

――「死線を超えて」

*

 老いと近づく死を見つめた7篇。上掲は「これは私の一生を通じて唯一の私小説だ」と書きだしている「「死線を超えて」。

 著者が政治家の中で唯一畏敬する賀屋輿宣の言葉をしばしば引用している(たぶん同じ場面だと思うが)が、ここでも……。

――「今しきりに考えているのは死ぬと言うことですな。死ぬと言うのはいかにもつまらない、死ねば自分で自分のことを忘れてしまい、私の死を悼んでくれた誰もが私のことを忘れてしまうのだからね」

 ちなみに以前『わが人生の時の会話』での賀屋輿宣は……。

「つまり、なんですな、長あい暗あいトンネルを、前後左右、誰もいない中を一人っきりで切りなく歩いていく、そんな感じがしますね、これはどうも退屈でやりきれんもんでしょうね」〔略〕

「みんながもう私のことを忘れてしまっている頃にもまだ一人でそのトンネルを歩いていって、それでその内には自分で自分のことを忘れてしまって、それで人間という奴は消滅してしまう。ま、そういうことなんですな」

 

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07/老人たちの賛歌

内館牧子★すぐ死ぬんだから /2018.08/講談社

 

 年を取れば、誰だって退化する。

鈍くなる。緩くなる。

くどくなる。

愚痴になる。

淋しがる。

同情を引きだがる。

ケチになる。

どうせ「すぐ死ぬんだから」となる。〔…〕

60代に入ったら、男も女も絶対に実年齢に見られてはならない。

そのくせ、「好奇心が強くて生涯現役だ」と言いたがる。

身なりにかまわなくなる。

なのに「若い」と言われたがる。

孫自慢に、病気自慢に、元気自慢。

これが世の爺サン、婆サンの現実だ。

この現実を少しでも遠ざける気合いと努力が、いい年の取り方につながる。間違いない。

そう思っている私は、今年七十八歳になった。

六十代に入ったら、男も女も絶対に実年齢に見られてはならない。

 

 

 

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