15/ミステリアスにつき◆T版2020年…………◎北村薫・雪月花 謎解きと私小説◎ジョン・マクフィー・ピュリツァー賞作家が明かすノンフィクションの技法
15/ミステリアスにつき
北村薫★雪月花 謎解きと私小説 /2020.08 /新潮社
その《この〔加田伶太郎〕全集は一巻かぎりですから、月報といっても今月だけです》と書かれた月報中、江戸川乱歩による「『完全犯罪』跋」に、
(ちなみに、Kada Reitaroをディサイファすると「Tare daro kaとなる。もう一つついでにしるすと、主人公探偵 Itami Eiten はMeitantei となる)〔…〕
ところで、この文字遊びは、皆にすんなり受け入れられ感心されているが、《KadaReitaro》は十一文字、《Tare daro ka》は十文字、そして《Itami Eiten》は十文字、
《Meitantei》は九文字だ。厳密にいえば、並び替えは成立していない。
これを、
――野暮なこといいなさんな。そこまで、細かくは出来なかったんだよ。
と、いってしまうのは簡単だ。
しかし、読みは読み手にある。文字の列を目で追うのが《読む》ことではない。
十一文字から十文字に、そして十文字から九文字になった時、消えた一字が――共通している。
――《Iではないか!》
快い戦慄が背中を走る。
――福永は偽りの名前から《私》を隠し綴り替え、真実を明かしたのだ。
15/ミステリアスにつき
ジョン・マクフィー 栗原泉:訳★ピュリツァー賞作家が明かすノンフィクションの技法 /2020/白水社
わたしが大学生だったころ、「創作」と「ノンフィクション」の二語を一緒に使う人がいたら、頭のおかしなやつか、さもなければコメディアンだと見られただろう。
ところが、今日わたしは、「創作ノンフィクション」と銘打った講座で教えている。
〔…〕ノンフィクションのどこが創造的なのか。それに答えようとすればまるまる一学期が必要だが、要点を言えばこうだ。
創造性はテーマ選びの中にある。また、記事をどう書くか、題材をどのように並べるか、人物描写のスキルや手法、取り上げた人びとを登場人物としていかに成長させるか、文体のリズム、雷の全体性と骨格(立ち上がって歩き回れるような骨格か)、手元の素材の中にある物語をどこまで読み取り、語ることができるか、などといったことにある。
創作ノンフィクションとは何か作り話をすることではなく、自分の持っているものをフルに活用することである。
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