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2021.02.02

加納愛子◆イルカも泳ぐわい。              …………実験的であるため“不発”も多いが、Aマッソの漫才も加納のエッセイも、群を抜く

202011


 パソコンで検索サイトを開く。


 最近はYahoo!もGoogleも使わない。ご存知の通りどちらも信頼度が高く、欲しい情報をすぐさま並べてくれる。


 が、いつしかそこに可愛げのなさを感じるようになった。
 仕事だとわかってはいるのに、抜け目のない後輩をついつい敬遠してしまう感覚と似ている。


 正しいことって、突きつけられると不快やもんね。そんなことない?

――「Etoowc」

◆イルカも泳ぐわい。加納愛子 /2020.11 /筑摩書房


 加納愛子(1989~)は、幼馴染の村上愛とお笑いコンビ「Aマッソ」を結成。ネタ作りを担当している。

 2015年にNHK BS で放送の「爆笑ファクトリーハウス 笑けずり」でこのコンビを初めて見てから注目している。オーディションで選ばれた9組の若手芸人が、富士山麓で共同生活し、日夜ネタ作りに励む。が、毎週与えられた課題を審査され、毎週1組ずつ、落とされていく。落ちたコンビは荷物をまとめ山麓を去っていく。のちにブレークした「ぺこぱ」も参加していた。

 容貌や体型をネタにする女性のお笑い芸人が圧倒的に多い中で、このコンビは漫才もコントもそのネタはユニークでシャープである。村上のチャーミングなボケに加納が鋭く突っ込む。尖がり具合が鋭い。コントでは「頼みごと」が群を抜いて面白い(YouTubeで見ることができる)。

 加納の本書のエッセイで、3篇選ぶとすると……。

 その1。アイロンがでてくる話。
「どういうわけかアイロンがツボなのだ」として、「私はいつまでアイロンを面白がれるだろう」、そのあとに「歳をとると急に穴子や湯葉なんかが美味しいと感じる瞬間がくると聞く。マックのポテトはあまり食べなくなった」と続く。こんなフレーズはベテランでも書けない。もちろん、オチもある。

 ――死ぬまでアイロンにそばにいてほしい。遺言に、「最後に顔にかける布には絶対アイロンあててください」と書いて、「もっと言うことあったやろ!」と家族が言うのを、先に逝った諸先輩たちと天国から笑いたい。(本書)

 その2。「国立国会図書館で児童ポルノにあたる可能性がある本の閲覧が禁止されたというのを、何かの関連記事で目にした」から始まる話。
閲覧禁止にするため老館長の元に二人の男が選別作業要員に選ばれて……、いやいや短いのでストーリーは紹介できない。秀逸なショートショートである。

 ドタバタもナンセンスもパロディもSFもといえば、筒井康隆(しか知らない。若い作家がいれば名前をあげたいが、知らない)的である。漫才でいえば「笑い飯」とか「インパルス」(しか知らない。新しいコンビがいれば名前をあげたいが、知らない)的である。

 その3。上掲の「Etoowc」。どすんと穴に落ち組むような仕掛けがある。

 加納と村上のふたりは大阪出身らしいが、大阪のどこだろう。 唯一にして最大の難点は、加納の大阪弁が、毒舌にしてもあまりに汚らしいことである。ほんとに汚い。過激さは言葉ではないだろう。見ていて引いてしまう。

 もうすこしまともな大阪弁を駆使すれば、たとえば予算委員会で菅首相に迫る辻元清美(笑)的大阪弁のような。現在の熱烈なAマッソファンだけでなく、ふつうの大阪弁をしゃべる大阪の若者にも歓迎され、東京に拠点を置いていたとしても、地上波にもっと登場するようになるだろう。

 実験的であるため“不発”も多いが、Aマッソの漫才、コントも加納のエッセイも、群を抜く面白さである。

 

 

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