01/ジャーナリスト魂・編集者萌え◆T版2021…………◎吉田信行・産経新聞と朝日新聞◎三浦英之・災害特派員◎魚住昭・出版と権力 講談社と野間家の110年
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
吉田信行◆産経新聞と朝日新聞
2020.12/産経新聞出版
「どんな政府であっても日本が生んだ政府です。それを切って捨てるような物言いはどうかと思う。
陸羯南が言っていますが、政府にできる範囲内のことを社説で書き、時に政府を勇気づけ、みんなを勇気付ける新聞であってほしい」(司馬遼太郎)
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元産経論説委員長による「平和だけを目的とした新聞と平和の維持を考える新聞。日本を敵視する国から「友好的」と褒められる新聞と「極右」と蔑まれる新聞」、朝日と産経の論調を過去にさかのぼって比較したもの。
――人についての批評は本人に出会った時でも逃げ出すことのないような程度に抑えるべきというのが福澤諭吉の戒めの言葉でした。また政府批判をする時も、能力以上のことを求め、それが達成できないからと言って叩くことは避けよ、というのが司馬が推奨した陸鵜南の言葉でした。(本書)
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産経・フジのトップとの会合で産経OBのこの司馬の発言は、村山富市自社さ連立政権時の時らしい。当方いくら熱心な司馬読者であっても、安倍や菅を“勇気づける”新聞であってほしいとは、思わない。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
三浦英之◆災害特派員
2021.02/朝日新聞出版
渡辺龍に捧ぐ――巻頭にはそんな一文を掲げたが、それは津波が押し寄せてくるなかでシャッターを切り続けた伝説的な報道カメラマンの固有名詞であり、同時に比喩でもある。
かつてあの被災地には泣きながら現場を這いずり回った数十、数百の「災害特派員」がいた。悲惨な現場を目撃し、名も無さ人々の物語を必死に書き残そうとした無数の「渡辺龍」たちと、今後ジャーナリズムの現場に飛び込もうと考えているまだ見ぬ「渡辺龍」たちに、この小さな手記を贈りたい。
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著者のノンフィクションは全作品を読んでいるが、これは朝日新聞記者としての「個人」を強く表面に出した“手記”である。
3.11発生翌日に被災地に入り、その後宮城県南三陸町に駐在員として赴任し、約1年現地の人々と生活を共にした。その“私生活”を回想したもの。
その後、アメリカ留学で学んだ「ジャーナリズムとは何か」を含め、これらの理論と被災地での実践は若手記者や将来ジャーナリズムの世界に飛び込もうと考えている学生たちの必読書である。
01/ジャーナリスト魂・編集者萌え
魚住昭◆出版と権力 講談社と野間家の110年
2021.2/講談社
私がここで強調したいのは、この作品がいまはなき『月刊現代』の仲間たちの全面協力によってできあがったということだ。
さらに付け加えれば、権力から独立した自由な言論を目指そうという『月刊現代』の志がなければ、この作品は生まれなかったということである。
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『現代』2008年休刊。前著『冤罪法廷』2010年から11年。
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講談社が1959年に編纂した社史『講談社の歩んだ五十年』のもとになった秘蔵資料合本約150巻を基に綴った“講談社と野間家の110年”史である。
講談社の近年の功罪……。「功」として『昭和萬葉集』全21巻の刊行。「罪」として『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(ケント・ギルバート著)の出版をあげている。
『昭和萬葉集』には、「出版物は、その時代、その民族の文化の水準を示すバロメータ」で「人類の共有財産」だという省一の理念が結晶化されている。その出版の経過が詳述されている。
また『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』はベストセラーになったヘイト本。編集者と会社の精神の荒廃を示すものではないかと批判している。
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