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2021.07.09

保阪正康◆昭和史の本棚           …………「あとがきの最後の五行」を見ることから始める

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〔カルチャーセンターの講師を務めていて〕本をあまり読んでいない質問者に共通するのは、思い込みの激しさであった。


  あえて書くが、本をあまり読んでいない人には、次のような三つの特徴がある。

①形容詞、形容句を常用、多用する。
②説明を飛び越し、いきなり結論を言う。
③どのような事柄を語るのでも、五分以上はもたない。
加えるなら、自制や自省に欠けるタイプが多く、感情の振れ幅も大きい。

 むろん本を読む人が立派で、読まない人が愚かだと言っているのではない。ただ、読書し、理解が深まれば、自らの言動をどこで抑制すべきかの知識も得られると、私は言いたいのである。

◆昭和史の本棚  保阪正康/2021.04/幻戯書房


 保阪正康(1939~)。朝日新聞等に掲載した197冊の書評集。

  当方も愛読した堀川惠子『原爆供養塔』、船橋洋一『カウントダウン・メルトダウン』、辺見じゅん『夕鶴の家』なども含む天皇/日中十五年戦争/朝鮮人、台湾人、琉球人、アイヌ/銃後、徴兵、疎開/原爆/戦犯、裁判/占領/憲法/メディアなどをテーマに昭和史関連書がならぶ。

 冒頭に、やや長めの「私の書評論」があり、書評を引き受ける時の5つ原則をかかげている。

①納得し難い本の書評は書かない。
②いかなる本でも七対三の構えでいく。
③著者の意図を正確に把握する。
④基本的な誤りを抱えている本の書評はしない。
⑤書評の字数は読んで決める。

 このうち③について、「あとがきの最後の五行」を見ることから始める、とある。「最後の五行」は、上梓にあたっての謝辞で占められることが多く、それによって新説も新視点もないと判断し、読むのをやめてしまう場合がある。必要なら、謝辞に名を挙げられた「先生」の本を読めばいい。とまことに手厳しい。

上掲の「本を読まない人」については、こう続く。

 ――知識に厚み、深みがなく、感性や耳学問で事象を捉え、判断する傾向が見られる。ゆえに形容詞などで言葉の表面を飾るだけで、話が続かず、いきなり結論を下す。普通なら思考の経路を語ったうえで結論を述べるはずだが、読書量の少ない人は、言いたいことを言うだけで、そう思うに至ったプロセスを説明できない。

 当方、自戒をこめて同様の危惧を持つのは、ツイッターだけで論ずる人や芸能人のコメンテーターである。結論しか書く字数がなく、思考のプロセスが分からない。

 

 

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