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2021.09.26

寺尾文孝◆闇の盾――政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男       …………世の中の人間関係はすべてが「グー・チョキ・パー」だ

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「人の世の中で起こったことは、人の世の中で必ず解決できる」――それが私の基本的な考え方だ。日本リスクコントロールがトラブルを処理する際もそれに則って行っている。

 世の中の人間関係はすべてが「グー・チョキ・パー」だ。会社や業界で思うがままに権勢を振るっている人間でも必ず頭が上がらない人は存在する。

 だから依頼主が「グー」で、対立する「パー」の人物から不当な要求を受けているような場合なら、「チョキ」の人物を見つけてくればいい。

 それが解決への近道だ。体育会系の人間関係だとこの傾向はより強いから、話は早い。そうした人間関係に加え、おカネが介在することでトラブルはより早期に解決へと導ける。どんな事案でも最終的には金銭での解決になることがほとんどだ。要はそのバランスがとれているかだけの問題である。

 

◆闇の盾――政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男  寺尾文孝/2021.05/講談社


 著名人の評伝から時代を騒がせた人の自伝まで愛読している。
 シロかクロかといわれればクロっぽい、たとえば本書にも登場する在日実業家の許永中『海峡に立つ――泥と血の我が半生』、元特捜のエース田中森一『反転――闇社会の守護神と呼ばれて』から芸能界でいえば常松裕明『笑う奴ほどよく眠る 吉本興業社長・大崎洋物語』まで、本人はなにもかも包み隠さずしゃべったと語るが、もちろん都合の悪い肝心なことは伏せられている。

 本書の寺尾文孝は、当方は初めて聞く名前だが、そのサブタイトルからしてクロっぽい人物である。1941年生まれ。1960~1966年、警視庁勤務。退職後、元警視総監の秦野章参議院議員の私設秘書となる。

――秦野先生の事務所に出入りするようになると、20~30人くらいの人間が「秘書」と称して出入りしていることに気づいた。〔…〕大物政治家には大手ゼネコンはじめ企業が社貝を派遣し、秘書として働かせていた。それによって入札情報をはじめ様々な機密情報にアクセスできるし、政治家を通して官庁とのつながりもできるからだ。〔…〕

 その当時、国会議員の事務所に支持者から持ち込まれる相談といえば、第一に子女の就職先の斡旋、次いで多いのが、交通事故や交通違反のもみ消し、取り消しだった。(本書)

 こうして秦野章の側近として長い間仕え、元法務大臣秦野の人脈、とくに歴代警察庁、検察庁幹部とのつながりを強めていく。

 日本ドリーム観光の事件がくわしく語られている。日本ドリーム観光と雅叙園観光のオーナーで、「昭和の興行師」と呼ばれた松尾國三の死去により、当時の経営者と松尾夫人との間で経営権をめぐる内紛が生じた。
 経営者側には元山口組系の池田保次が率いる仕手集団コスモポリタン、松尾夫人側には秦野章の命により元関東管区警察局長を社長、寺尾文孝を副社長にしての仕手戦である。

 結局、雅叙園観光はコスモポリタン側に、ドリーム観光は松尾夫人側に分離される。雅叙園観光はやがて許永中、伊藤寿永光など後にイトマン事件を起こす面々に転売される。ドリーム観光は、ダイエー中内㓛の傘下に入る。

 本書によれば、当方がかつて仕事で利用したことがある神戸税関近くの神戸ニューポートホテルはその土地建物が100億円で雅叙園観光に譲渡され、すぐ伊藤寿永光に転売され、のち廃業。今になってホテルが消滅し、現在は某宗教団体の建物になっている理由が判明した。

 さて寺尾文孝は、日本リスクコントロールを設立する。暴力団、総会屋、似非右翼等の犯罪組織、反社会集団への対応や企業内犯罪等トラブル支援の危機管理コンサル事業、また警察OBの再就職あっせんや専門家派遣事業を行う。

 話はそれるが、山口敬之という安倍首相の“よいしょ本”を書いたジャーナリストが、準強姦容疑で逮捕状まで出ていた。これを中村格警視庁刑事部長が執行停止し、山口は逮捕を免れたという事件があった。その中村格は菅義偉官房長官の秘書官を務めたが、菅首相が退任直前、駆け込みで警察庁長官に昇りつめた。

 上がやれば、下も真似る。これが組織の大原則である。

 以下、当方の妄想だが、国会議員、自治体の長、大企業や芸能プロの社長たちがトラブルを抱えると、警察本部の幹部に内々に相談する。すると警察幹部は「警察では直接対応しにくいが、リスクコントロールの寺尾さんを訪ねたら」と紹介するのではないか。

 本書の略歴には、「仕事の依頼はすべて口コミで、宣伝は一切せず、電話番号は非公開、ホームページさえ作ったことがないが、政治家、企業経営者、宗教団体、著名人など、あらゆるところから持ち込まれる相談ごとやトラブルに対処し、解決する知る人で知る最強の『仕事人』」とある。

「必殺仕事人」の中村主水は、奉行所の同心にして裏稼業をもつが、権力に虐げられる貧しい人の味方である。自ら「仕事人」と称する著者は、サブタイトルからしてクロっぽい人物であると書いたが、仕手集団コスモポリタンの池田保次に著者が語った言葉がある。
 
 ――「池田、わしら、男の磨き方というのは、いい豆腐になるために努力しているんだ。〔…〕硬すぎてもいけないし、柔らかすぎるのもダメだ。いつも四角で、角が崩れてはいけない。中はどこまでいっても真っ白という、そういう豆腐だ。

お前は中を割ったら真っ黒だろう。俺は真っ白な豆腐を目指してるんだ」 (本書)

 

 

 

 

 

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