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2021.12.06

大下英治◆スルガ銀行かぼちゃの馬車事件  四四〇億円の借金帳消しを勝ち取った男たち …………悪徳ビジネスに対決する弁護士と被害者同盟の破天荒な闘い

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 待ち合わせに指定してきた喫茶店で二人の前に現れたその〔スルガ銀行〕元行員は、氏名の秘匿を条件にして切り出した。
「この場限りですよ。いまも監視されている可能性がありますから……」
「監視?」


「スルガは辞めた人間が情報を漏らさないか、探偵をつけているんですよ。……そんなこともする組織なんです」〔…〕

「スルガは、反社とつながってて、パワハラも当たり前の環境でした。そんなところで優秀な社員というと……要するに、法律違反を平気でできて業績をあげられる奴です」

「今回のシエアハウス投資スキームにも関係が?」
「はい、キックバックで1億円以上儲けたって得意になってた同僚もいました。仲介業者から足がつかないように、レターパックに現金を入れて受け取ってるんですよ。どういう金か周りもみなわかってますけど、誰も何も言わない……金庫を買わないと金が入りきらないって笑ってました…」

◆スルガ銀行かぼちゃの馬車事件 四四〇億円の借金帳消しを勝ち取った男たち 大下英治 /2021.02/さくら舎


 これは「かぼちゃの馬車」というシエアハウスを購入したものの、運営会社の経営難により、千人を超えるオーナーが莫大な借金を抱えることになった事件である。
「被害者は、30年ローンということで、ほとんどが40代の働き盛りなんだが、シエアハウス1棟1億5千万円ほど出資している。しかし、販売会社や運営会社、スルガ銀行がグルでだましていて、ただの不動産投資の失敗では片付かない」

 たとえば、こんな本を読んで、騙される。『「家賃0円・空室有」でも儲かる不動産投資』(ダイヤモンド社刊)というタイトルに、「脱・不動産事業の発想から生まれた新ビジネスモデル」の副題がついている。帯には「『住まい×仕事』女性専用シエアハウスだから実現した社会貢献型ビジネス」。

 河合弘之弁護士は、これを「悪の平行四辺形」というフレーズを使った。
 シエアハウス詐欺の仕組みを編み出したスマートデイズ、シエアハウス投資を売り込むゼノン住販、返済能力のない者に融資をしたスルガ銀行、客に高値で売りつけキックバックをスマートデイズに渡していたホーメストを代表とする建築会社である。

 河合弘之弁護士と冨谷(仮名)がリーダーの被害同盟のメンバーたちは、自己責任論で傷つきながらも、不正融資は返済せずと戦いに挑む。スルガ銀行岡野会長宅にデモをかけ、株主総会で経営者を糾弾し、株主代表訴訟も起こした。世間を騒がせた「スルガ銀行不正融資事件」。被害者約250名が抱える不動産担保ローン合計残高約440億円をスルガ銀行が「帳消し」にするという、金融史上前例のない奇跡の解決となった。

 河合弁護士の活躍譚の一部始終を綴った本書で、最後に河合弁護士はこう語る。

 ――「弁護士とは、ある意味寂しい職業なんです。困っている人たちの依頼を受け、一生懸命闘っても、普通は『解決バイバイ』といって、解決すると弁護士との緑は切れちゃうんです。『ありがとうございました。お世話になりました。さようなら』と。〔…〕

 しかし、このSS被害者同盟の人たちは違った。〔…〕自分たち以外の被害者たちも、社会悪からきちんと救済をしなければならない。またこれ以上詐欺事件を発生させてはいけない。そうした社会的立場にまで到達したという点で、希有な被害団だと思います。そういう人たちとともに闘って成果をあげることができたのは、わたしたち弁護士、またわたし個人にとっても一生の宝です」

 

 

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