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2021.12.06

魚住昭◆出版と権力 講談社と野間家の110年   …………秘蔵資料合本146巻を駆使して綴った野間家の人々

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 私がここで強調したいのは、この作品がいまはなき『月刊現代』の仲間たちの全面協力によってできあがったということだ。

 さらに付け加えれば、権力から独立した自由な言論を目指そうという『月刊現代』の志がなければ、この作品は生まれなかったということである。

 

◆出版と権力 講談社と野間家の110年 魚住昭 /2021.2/講談社


 魚住昭(1951~)といえば、『渡邉恒雄 メディアと権力』(2003)、『野中広務 差別と権力』(2004)の2つのノンフィクションがまず思い浮かぶ。その後、『冤罪法廷 特捜検察の落日』(2010)からしばらく著書を見かけなかった。

 ――2007年春、私は体調を崩して思うように仕事ができなくなった。2008年末には『月刊現代』が休刊になり、私を含めノンフィクションの書き手は主たる発表の場を失った。

 そして秘密保護法の制定や集団的自衛権の行使容認などが相次ぎ、本田さんが生涯こだわった戦後民主主義は風前の灯火となった。
 そろそろ私のライター稼業も店じまいのときが近づいたかな、と思いかけた矢先の2016年秋、かつての『月刊現代』の編集者たちから声がかかった。(本書)

 日本の近代をテーマに、そこから現代を照射するような作品を書きたいと思っていると答えた著者に、やがて段ボール箱が目の前に積まれる。ハードカバーに保護されたぶ厚が約150巻。講談社が1959年に編纂した社史『講談社の歩んだ五十年』のもとになった秘蔵資料である。こうして本書が生まれることになる。

「おもしろくてためになる」がキャッチフレーズの大日本雄弁会講談社は、当方にとっては戦後間もない時期の『少年クラブ』である。そんな部分も含めて、創業者野間清治から現在の7代目までの野間家の人々を中心にわが国の出版史が綴られている大冊である。

 講談社の近年の功罪……。


「功」として『昭和萬葉集』全21巻の刊行。「罪」として『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(ケント・ギルバート著)の出版をあげている。

『昭和萬葉集』には、「出版物は、その時代、その民族の文化の水準を示すバロメータ」で「人類の共有財産」だという省一の理念が結晶化されている。その出版の経過が詳述されている。

 また『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』はベストセラーになったヘイト本。編集者と会社の精神の荒廃を示すものではないかと批判している。

 ――これからの講談社にどんな未来が待ち受けているのだろうか。戦時中のような過ちをくりかえさず、文化の作り手としての責任をまっとうすることができるのかどうか。その成否は、一出版社の問題に止まらず、無数の読者の運命を左右することになるにちがいない。(本書)

 

 

 

 

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