経済・政治・国際

2007.05.16

池澤夏樹/本橋成一■ イラクの小さな橋を渡って

20070516ikezawairaku

2001年の秋から、「ニューヨーク・タイムズ」は世界貿易センタービルの被害者一人一人の人生を詳しく辿る連載記事を載せた。テロでも戦争でも、実際に死ぬのは家族も友人もある個人だ。だからテロというものを徹底して被害者の立場から、殺された一人ずつの視点から見るという姿勢は大事だ。

しかし同じ新聞がアフガニスタンの戦争のことは抽象的な数字でしか伝えない。アメリカ軍が放つミサイルの射程はどこまでも伸びるのに、メディアの視線は戦場に届かない。行けば見られるはずの弾着の現場を見ないまま、身内の不幸ばかりを強調するメディアは信用できない。

だから、自分の目で見ようと思ってぼくはイラクに行った。バグダッドで、モスルで、また名を聞きそびれた小さな村で、人々の暮らしを見た。ものを食べ、互いに親しげに語り、赤ん坊をあやす人の姿を見た。わいわい騒ぎながら走り回る子供たちを見た。そして、

この子らをアメリカの爆弾が殺す理由は何もないと考えた。

■ イラクの小さな橋を渡って|池澤夏樹・文/本橋成一・写真|光文社|200301月|ISBN9784334973773

★★★

《キャッチ・コピー》

米国がいつ攻撃するかわからない200210月末のイラクに行った。

国民はほんとうにサダム・フセインの圧制下に苦しんでいたのか?

経済制裁下で食べ物も足りない貧しい国だったのか?

冷静な著者のレポートは、メディアでは報道されない真のイラクの人々の姿を淡々と綴っていく。

memo

開戦以前の2002年のレポートなので、掲載されている地図にサマワという地名はない。

*

池澤夏樹■ 異国の客

池澤夏樹/芝田満之■カイマナヒラの家Hawaiian sketches

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋inイラク――死んでもないのに、カメラを離してしまいました。

宮嶋茂樹■ サマワのいちばん暑い日――イラクのど田舎でアホ!と叫ぶ

米原万里■ 打ちのめされるようなすごい本

| | コメント (0)

2007.05.15

手嶋龍一■ ライオンと蜘蛛の巣

20070515teshimaraion

「米ソの冷戦から最も多く戦略的な恩恵を得たのは日本だった。だが、冷たい戦争で多くを得た者は、同時に多くのものを喪っていたんだ。だが、誰もそのことに気づいてはいない」

アジアの冷戦構造に深く組み込まれた戦後の日本は、同盟国アメリカに自国の安全保障を安んじて委ねてしまった。だがそれゆえに、国際秩序の創造に関わる志を喪い、この分野で一級の人材を育てなかった。そしていま、明日の戦略を担う若い世代の払底に苦しんでいる。それがいまの日本の混迷を招いてはいないか。これが絶壁の家に棲む情報士官の見立てだった。〔…〕

アメリカの主要同盟国は、いずれも異なったかたちで冷戦期を過ごさねばならなかった。〔…〕

こうした冷戦政治の文脈からみれば、日本が寛大な占領と戦後を享受した側面は否めないだろう。だがそれゆえに、われわれは冷たい戦争のひんやりとした空気を真に呼吸することがなかったのかもしれない。〔…〕

過去と真摯に向かいあおうとしない者は、未来を構想する能力をいつしか摩滅させてしまう。冷戦という名の時代を漂流していた日本は、いま過ぎ去った時から一斉射撃を浴びて身を屈めているようにみえる。

――「アランセーターの人」

■ ライオンと蜘蛛の巣|手嶋龍一|幻冬舎|200611月|ISBN9784344012547

★★★★

《キャッチ・コピー》

世界29の都市で見た、歴史的事件の裏側、政治家、スパイたちの素顔を描く。

影なき戦いを彩る人々を静謐な筆致で描いた、29の都市で生起するリアル・ドキュメント。

memo

 世界を駆けるジャーナリストの日々の挿話集。

上掲の「アメリカの主要同盟国は、いずれも異なったかたちで冷戦期を過ごさねばならなかった」の後はこう続く。

「英国は戦勝国とは名ばかりだった。一世帯あたりの配給量は、肉は週わずか六十グラム、卵は一個であった。戦後の大英帝国はかかる困窮に耐えなければならなかった。それほどに国力は疲弊していたのである。

フランスは第二次世界大戦と植民地戦争のふたつながらの敗者だった。それゆえ、「フランスに栄光を」と呼号する誇り高さドゴール将軍を必要としたのであった。

ドイツは祖国を四つに分割されて戦勝国の統治に委ねられた。そしてその東西の分割ラインがそのまま冷戟の最前線となった。同じ民族がふたつの政治体制に切り裂かれた」

*

手嶋龍一/佐藤優■ インテリジェンス 武器なき戦争

手嶋龍一■ウルトラ・ダラー

| | コメント (0)

2007.05.02

魚住昭■ 官僚とメディア

20070502kanryouozumi

だが、新聞やテレビはそのことをほとんど報じない。知らないからではない。下手に批判すれば検察の不興を買い、捜査情報が取れなくなるからだ。あるいはこう言ったほうが正確かもしれない。検察担当記者たちに求められているは捜査情報を取ることであって権力の横暴を糾弾することではない。記者たちはただ職務に忠実なだけだ、と。

情報をエサに新聞やテレビを味方につければ、検察が批判されることはほとんどない。つまり世間の耳目を引く事件を立て続けにやっている限り、情報源としての検察の重要さは失われないから、どんなに無茶をしても記者たちはそれを正当化してくれる。

逆に言えば、検察は自らの威信や影響力を保つために次から次へと事件を摘発しなければならないという自転車操業的体質をこの十数年で身につけてしまったのである。

こうして検察組織の劣化は急激に進んだ。その一方で、強大な権限を与えられているがゆえに、自らを厳しく抑制する「秋霜烈日」の精神は失われ、「この国を統治するのは俺たちだ」と言わんばかりの権力的な自意識だけが肥大化した。

――第六章 検察の暴走

■ 官僚とメディア|魚住昭|角川書店|200704月|新書|ISBN9784047100893

★★★

《キャッチ・コピー》

メディアと官僚の癒着は、ここまで進んでいる!

耐震偽装事件に見る国交省とメディアの癒着、最高裁・電通・共同通信社が仕組んだ「タウンミーティング」やらせ事件・・・なぜメディアは暴走する官僚組織の支配に屈するのか? 独自取材で驚くべき真実が明らかに。

memo

 国や地方自治体の粗雑極まりない仕事のやり方は小泉政権と同時進行で増殖していったと後の歴史は語るだろう。

*

魚住昭■野中広務 差別と権力

魚住昭/佐藤優 ■ ナショナリズムという迷宮――ラスプーチンかく語りき

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.05.01

内田樹■ 9条どうでしょう

20070501kyuujyou

「普通の国」になりたいという改憲派の祈りを私は軽視するつもりはない。けれども、彼らが求めるものは改憲によっては達成できないという見通しは告げなければならない。

「普通の国」になるというのは、「奴僕の国」であることを止めるということである。日本の場合、「普通の国」であるための論理的条件とは、アメリカを含むすべての国と戦争をしたいときには戦争することができる権利を留保することである。

だから、「普通の国」となった日本にとって最初の政治日程は、日米安保条約の廃棄と、駐留米軍基地の返還要請と、核兵器開発になるはずである。

九条を棄てた後も、日米安保は堅持されるし、米軍基地もそのまま置かれるし、核開発などもってのほかと言うのなら、日本の「従属国」的本質は改憲によって少しも変わらなかったことになる。

それは、「普通の国」になれないということと憲法九条の存在の間には論理的な関係がないということを意味している。

 私はむしろ「普通の国」になるチャンスは憲法九条を維持している場合の方が高いのではないかと考えている。

――内田樹 「憲法がこのままで何か問題でも?」

■ 9条どうでしょう|内田樹/平川克美/小田嶋隆/町山智浩|毎日新聞社|200603月|ISBN9784620317601

★★★★

《キャッチ・コピー》

護憲論も改憲論も聞き飽きた!

新しい話をしようじゃないか!!

人気沸騰の哲学者・内田樹が選んだ切れ味鋭い書き手たちによる、かつてない憲法9条論。

だれも(大きな声では)言えなかった憲法と日本の話。

memo

内田樹の本文中のシュミレーションの1つ。

万が一、日米安保が機能しないで、日本が侵略された場合はきわめて不幸な未来が私たちを待っている。〔…〕

数千数万の日本人が死傷し、財産が奪われ、領土が分断された場合、あとに生き残った日本人はどうなるだろう?〔…〕

日本の経済力と集団組織とテクノロジーと知的ポテンシャルのインフラの上に憎悪に満ちたナショナリズムが乗ったときに、日本がどんな国になるのか、想像するのはむずかしいことではない。〔…〕

ついに太平洋を越えて、日本を裏切ったアメリカと「差し違える」ことを何十年かかっても完遂することを全国民的な悲願とする国になることだろう。

どう考えても、これほど日本人の「忠臣蔵」的、「総長賭博」的メンタリティにぴったりくるシナリオは存在しない。(p5455

*

内田樹■ 下流志向――学ばない子どもたち 働かない若者たち

内田樹■「おじさん」的思考

内田樹■子どもは判ってくれない

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.04.13

■ そうだったのか!現代史|池上彰

20070413soudattaikegami

ロシア革命でソ連が誕生したとき、ロシア帝国の人口は一億人を超えていましたが、民族としてのロシア人は、その半分もいませんでした。多民族の集合体だったのです。

スターリンは、さまざまな民族が故郷に固まって住んでいると、民族としての団結が強まり、やがてソ連からの独立運動を始めるのではないかと心配しました。ここにもスターリンの疑り深い性格が出てきたのです。

このため、各地の少数民族を集団で移転させる政策がとられました。民族ごと何の関係もない遠方に送り込んでしまうのです。

たとえばチェチェンです。いまだにロシア軍との激しい戦闘やゲリラ活動が続いているチェチェンでは、スターリン時代、住民が中央アジアやシベリアに集団移転させられました。

スターリン死後、チェチェン人は故郷に帰ることが許されましたが、ロシアに対する恨み、不信感は強まりました。〔…〕

スターリンは、集団移転ばかりでなく、「分断」の方法も採用しました。中央アジアのイスラム教の民族が団結してソ連に歯向かぅことを恐れ、5つの共和国に無理やり分割してしまいました。この5つの共和国は、現在カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンという独立国になっています。

998月、キルギスで経済援助のために出張していた日本人4人が、ゲリラの人質になる事件が起きました。これは、スターリンによって無理に分割された中央アジアに、イスラム教徒の統一された国家を建設しようという武装ゲリラ組織による犯行でした。スターリンの政策が、いまだに尾を引いているのです。

■ そうだったのか!現代史|池上彰|集英社|2007 03月|文庫|ISBN9784087461411

★★★★

《キャッチ・コピー》

全日本人必読! 世界がわかるための基礎知識。

民族紛争、テロ、領土問題など、激動する世界を理解するためには、少し前の時代を正確に知ることが必要だ。現在の動向に合わせ、単行本版に加筆。豊富なビジュアルとやさしい解説で現代史がわかる!

memo

 知っているつもり、今さら訊けないイスラエル、ベトナム戦争、ベルリンの壁、天安門広場……。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.31

■ ほんとうのアフガニスタン|中村哲

20070331afugannakamura

アフガニスタンでは、「お金がなくても生きていけるけれども、雪がなくては生きていけない」という諺があります。全くその通りで、雪が夏に溶け出して、川を満たし、そして豊かな農業地帯を提供していた。

その貯水槽である巨大なヒンズークシユの山の雪が、だんだん消えつつあるのです。おそらく戦争が起きなくてもアフガニスタンそのものが、何年かすると砂漠化して、一千万人以上が居住空間を物理的に失うのではないかとの予測もされています。〔…〕

ことの深刻さに私が気づいたのは二〇〇〇年六月にダラエ・ヌール診療所の建て直しに訪れたときのことです。〔…〕。その折、ダラエ・ヌール診療所で群をなして待機する患者たちを見て、いったい何事かと驚いたのです。

患者の大半が赤痢などの腸感染症でした。しかも犠牲者の大半が子供で、上流から何時

間もかけで歩いて来る者も少なくない。外来で待つ間、死んで冷えてゆく乳児を抱えた若

い母親が途方にくれていた。〔…〕

じつは赤痢の大流行が理由で、さらにその原因が飲料水の欠乏だったのです。例年なら、水であふれる谷は、田植えの季節です。だが、水田どころか、行けども行けども干からびた地面と、滴れた水無川が延々と続いていた。

■ ほんとうのアフガニスタン|中村哲|光文社|2002 03月|ISBN9784334973339

★★★

《キャッチ・コピー》

内戦、伝染病、貧困、飢餓、あらゆるいのちの闘いをつづけてきた日本人医師。

史上最悪の大干ばつ発生に、医師団は1年で1千本の井戸を掘り、

いままた空爆後のアフガン難民に、いち早く食糧援助を開始している。

*

宮嶋茂樹■ 儂は舞い降りた―アフガン従軍記上|儂は舞い上がった―アフガン従軍記下

高木徹■ 大仏破壊――バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.28

■ 不肖・宮嶋inイラク――死んでもないのに、カメラを離してしまいました。|宮嶋茂樹

20070328inirakumiyajima

市民は略奪に忙しく、商店すら開いていない。官庁からはテレビ、パソコンなどの電化製品からイス、机、アルミサッシまでパクる。あげくの果てに放火である。

免許、登記簿、パスポート、原本も含めて、すべて灰になったのである。すべての官庁から記録がなくなったのである。病院から救急車や薬品、医療機器、警察・軍隊から武器を持ち出し、治安が悪くなった、インフラが来ない、薬がないのを、米軍やフセインのせいにするのである。〔…〕

不肖・宮嶋、地球の肛門みたいなところばっか渡り歩き、今までとんでもない奴らを目の当たりにしてきた。その中でも、イラク人は最低の部類に入る。イラク人は図書館の本にまで放火したのである。やっていることはタリバン以下である。そんなことをやったのはヒトラー以来である。絵画や美術品や芸術も灰になったのである。患者のいる病院から医薬品までパクっていったのである。

ごく一部の市民ではない。道路が見物渋滞ならぬ略奪渋滞するぐらいの市民がである。もう、人間の盾ならぬ、人間のクズの寄せ集めの国だったのである。

復興には、とてつもないゼ二と時間がかかるであろう。ほかならぬイラク人自身がそうさせるのである。

■ 不肖・宮嶋inイラク――死んでもないのに、カメラを離してしまいました。|宮嶋茂樹|アスコム|2003 07月|ISBN9784776200888

★★★★

《キャッチ・コピー》

狂気に包まれたバクダッドでの4週間を撮影した写真を公開。

死んでもカメラを離さないと堂々とコイていた私が、死んでもいないのにカメラを投げだし、逃げだしたのである――。報道カメラマン不肖・宮嶋がイラク戦争開戦初日から4週間にわたって命を削りながら撮影し続けた写真を公開。

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋 国境なき取材団

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋 撮ってくるぞと喧しく!

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋史上最低の作戦

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋青春記

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋踊る大取材線

宮嶋茂樹■ 儂は舞い降りた―アフガン従軍記上|儂は舞い上がった―アフガン従軍記下

宮嶋茂樹■ サマワのいちばん暑い日――イラクのど田舎でアホ!と叫ぶ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.27

■ サマワのいちばん暑い日――イラクのど田舎でアホ!と叫ぶ|宮嶋茂樹

20070327mawajima

すると、あの2枚の写真は、両家の家族の日に触れる前に、全国80万の週刊文春読者の目に晒されることになる。

そして、何が何だかわからず、不安と困惑の真っ只中にいる両家の家族は、320円の週刊文春で二人の最後の写真を目にしてしまう。しかも、悲劇の直前の様子を、直接、私の口からではなく、活字から知ることになるのである。

これは……、やはり人の道に外れている。不肖・宮嶋、幾度も「人間のクズ!」と罵られてきたが、人間以下にはなりたくない。私と1時間20分も話し込み、その4時間後に還らぬ人となったのである。私の上官・橋田信介とその甥っ子が――。

ここは、何とかして誌面より先に写真をお届けし、私の口から宿営地での二人の様子を両家の方々にお伝えしなければならん。

■ サマワのいちばん暑い日――イラクのど田舎でアホ!と叫ぶ|宮嶋茂樹|都築事務所/祥伝社|2005 05月|ISBN9784396693206

★★★★

《キャッチ・コピー》

もう、あんな国には行きたくない!

迫撃砲着弾、日本人人質事件、宿営地避難民生活、オランダ兵爆殺、橋田氏・小川氏襲撃……

それでも頑張る自衛隊!

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋 国境なき取材団

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋 撮ってくるぞと喧しく!

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋史上最低の作戦

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋青春記

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス

宮嶋茂樹■ 不肖・宮嶋踊る大取材線

宮嶋茂樹■ 儂は舞い降りた―アフガン従軍記上|儂は舞い上がった―アフガン従軍記下

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.10

■ プリンスの墓標――堤義明怨念の家系|桐山秀樹

20070310seibukiriyama

堤は「社員は皿の下の棒でいい。回すのは自分だ」と語り、「頭のいい奴はいらない。物事の判断はすべて自分が行なう」と口にした。それは若くして「王国」の帝王となった男が、過度に抱く、強烈な「劣等感」の裏返しとも言うべきものだった。

「レストランのテーブルの飾り付けや椅子の高さまで、高い声で指示する。確かに、普通の支配人なら絶対に指摘しないような細かなことばかりだが、それなりに筋も通っている。特に食材に詳しく、現場としては〝おっしゃる通りです″と答えるしかなかった。だが、それは頭がいいというより、単に神経質で、矮小なことに気が付くだけのことでした」と、元社員は言う。

プリンスホテルが出す「料理」にも堤義明自身の「好み」が色濃く反映された。

「香辛料はダメ、面倒臭いものはダメ。蟹なども自分でむくのはダメ。〝すぐ食べられないものを何で出しておくんだ″と怒られました。ニンニクなど臭いの出るものも御法度。だから、プリンスのロビー・ラウンジでは、カレーなどが出せません。〔…〕

要するに、堤前会長の味覚は、いわゆる″お子様口″。気どった難しい高級な料理より、分りやすい『味』がお好みなのです」

――第一章 支配の「原点」

■ プリンスの墓標――堤義明怨念の家系|桐山秀樹|新潮社|2005 04月|ISBN9784103662020

★★★

《キャッチ・コピー》

堕ちたカリスマ・堤義明のビジネスに隠されていた「黒い意図」とは何か―。軽井沢、赤坂、苗場、大磯、芝など全国の「西武王国」因縁の地を訪ね、噴出してきた怨念の言葉から急転直下の転落の真相に肉迫。金と血筋と権力に翻弄されて「キング」になれずに終わった「プリンス」の所業を鮮明に描き出す決定版ノンフィクション。

立石泰則■ 淋しきカリスマ堤義明

日本経済新聞社■ 西武争奪――資産2兆円をめぐる攻防

平井康嗣■ 西武を潰した総会屋芳賀龍臥――狙われた堤義明

中嶋忠三郎■ 西武王国ーその炎と影 新装版――側近no.1が語る

桐山秀樹■ プリンスの墓標――堤義明怨念の家系

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.09

■ 西武王国ーその炎と影 新装版――側近no.1が語る|中嶋忠三郎

20070309seibunakajima

本書の著者、中嶋忠三郎は私の最愛の父であり、平成十年に他界し既に七年が過ぎ去った。

晩年、父は米寿を記念して本書「西武王国-その炎と影」を上梓したが、平成29発売直前に西武側に全冊買い取り回収され、いわゆる幻の〝発禁本〝となってしまったのである。

今年3月の商法違反事件、10月の株式偽装工作等、西武グループの一連の不祥事を見るにつけ、私は今こそこの書を世に送り出したいと思うに至ったのである。

義明氏をはじめとする西武グループ全社員達の籍の弛みを懸念し、西武王国の危機を憂い、西武草創期の精神を蘇らしたいと願ってやまなかった亡き父の厚い願望を改めて世に問うべきと考えたのである。本書が多くの読者、特に西武グループの全社員に読まれる事を切に願う者である。

――新装出版にあたって 中嶋 康雄

■ 西武王国ーその炎と影 新装版――側近no1が語る|中嶋忠三郎|サンデー社|2004 12月|ISBN9784882030416

★★★

《キャッチ・コピー》

堤康次郎、義明両氏に仕えた元側近No.1が書き遺していた真実とは? 西武・コクドの株式偽装工作など一連の不祥事の内幕を綴る。1990年、発売直前で西武側に回収された幻の一冊の新装版。

立石泰則■ 淋しきカリスマ堤義明

日本経済新聞社■ 西武争奪――資産2兆円をめぐる攻防

平井康嗣■ 西武を潰した総会屋芳賀龍臥――狙われた堤義明

| | コメント (0) | トラックバック (0)