田沢拓也◆無用の達人 山崎方代
それにしても、この人の「ふるさと」のような感じは不思議そのものだ。 話しているうち、この人は嘘つきなのだと鳥海は思う。嘘つきなのだけど、何だか心が癒される。まるで乾いた土に水や養分をもらうような気分はどこから生じてくるのだろう。 万代の嘘のまことを聞くために秋の夜ながの燠が赤しも いくら対象を見たとおりに描いても、それで事物を表現できるわけではない。真実の表現を目ざすなら、そこに“薬のような嘘”を少しだけまぜる。 そうすれば自分の思ったとおりの表現ができる。それが万代の嘘と笑いの真髄なのだろうと鳥海はのちに思いいたる。 |
◆無用の達人 山崎方代|田沢拓也|角川学芸出版|ISBN:9784043689033|2009年06月|文庫
★★★★
《キャッチ・コピー》
家族も持たず、定職にも就かず、始末のつかない自分に悩みながら笑いとペーソスの文芸に磨きをかけた孤独と無頼の日々、そして一度だけあった「本当の恋」とは?虚言と奇行を繰り返しながら、短歌一筋に生きた異端の歌人ホーダイに迫る。
《memo》
「方代は、オレの短歌の半分以上は尾形亀之助と高橋新吉とフランソワ・ヴィヨンからの貰い物なんだよと口にした。彼らの作品からいろんなフレーズを記憶したりノートに書いたりしたんだ、と」(本文より)。
そういえば『もしもし山崎方代ですが』(2004)所収の「本と私」というエッセイに「六畳一間の寝台の上の机にのっているのはヴィヨンの詩集である。何かものうげに今日は、かたりかけて来る。うす汚れてはいるけれども私にとってかけがえのない大切な本である。もうかれこれ四十年の付き合いだ」とある。
| 固定リンク | コメント (0) | トラックバック (0)











